“何もしない時間”を楽しむ、軽井沢の暮らし。
ある時は、光を取り込む窓辺に。
ある時は、食卓を華やかに彩るテーブルに。
ある時は、風合いの良さを肌で感じるベッドリネンに。
使う場所や⽤途によって、その布の表情はがらりと変わる。
さまざまな⼈びとの暮らしから、〈14-23〉がある⾵景をお届けします。
美しい自然に囲まれ、別荘地として人気が高い、長野県・軽井沢。この数年は、余暇を過ごす場所としてだけではなく、移住地としても注目されています。3年前、念願のマイホームを手に入れた髙橋夕貴さんも、この地に魅入られたひとりです。森の別荘地で幼い子供たちと暮らす日々。別荘の住人とは異なる過ごし方のなかで、それまでの生活からどのような変化があったのでしょうか。揺らめく布の奥には、初夏の雨に濡れる豊かな樹々が映ります。
富山県出身の髙橋さんは、結婚して数年後、旦那さんの実家近くに位置する軽井沢へ、家族で移住しました。小さい子供を抱えて、初めての土地での暮らしに、当初は楽しみより不安なことが多かったそうです。
「軽井沢は観光地という特殊な環境もあって、慣れるまでは時間がかかりました。観光客に向けた価格設定で、日常的に利用できるお店が少なく、ファミレスもありません。小さい子供を連れて出かけられる場所が、ほとんどない状態でした。」
もともと、家でじっとしているより、予定がなくても外へ出かけるのが好きなタイプだったという髙橋さん。しかし、お店の選択肢の少なさや、理想の家を手に入れたことが重なって、自然と家で過ごす時間が長くなっていきました。
外食の選択肢がなくなったことで、むしろ自宅で作る料理のハードルは下がったといいます。
「余裕がない時は、冷凍食品や出来合いの料理に頼るようになりました。食べることも、料理をすることも好き。でも、いつも完璧じゃなくてもいい。気負わず食卓と向き合えるようになったのは、家で過ごす時間が増えたおかげです。」
「天気の良い日は、庭でバーベキューを楽しんだり、落ち葉を集めて焼き芋を焼いたりして過ごしています。自分がこんな生活を送るようになるとは思っていませんでした」と、髙橋さん。
「何気ない日常をただ過ごす、それが驚くほど楽しいんです。」
家を建てることは、夫婦の長年の夢だったといいます。
「結婚当初から、いつか持ち家がほしい、というのは夫婦共通の思いでした。まだどこに家を建てるか決まってないうちから、設計会社を探し、SNSを通じて出会ったのが『エクリアーキテクツ』さんでした。」
シンプルで美しい空間を手がける仕事に惹かれ、依頼を決めたという高橋さん。完成した家は、吹き抜けのある開放的な空間で、一階にリビングキッチン、二階は子供たちが自由に遊べるフリースペースと寝室という間取り。そして、夫婦たっての希望で、旦那さんのDJブース、夕貴さんの手がけるセレクトショップ「luoda」を暮らしの片隅に設けました。
空間の印象を決める壁は、とくにこだわった部分だといいます。
「クロスは使わず、すべて塗り壁にしました。予算を抑えるため、仕事の合間に自分たちで塗ったこともあり大変でしたが、光が差した時に出る陰影がとても気に入っています。」
壁だけでなく、天井や扉まで統一された味わい深い色味は、明るいうちは淡いグレーに、暗くなると白く輝く。時間帯や光の加減によって表情の違いを楽しんでいるそう。
暮らしの中心に位置するキッチンは、回遊できるようにコの字型に設計。収納はパントリーにまとめることで、空間に余白が生まれます。すっきりとした佇まいが美しいステンレスキッチンは、セミオーダーしたもの。壁の一部をガラス製にしたことで、光が巡る開放的なデザインに。
断熱加工を施した住まいは、生活の快適さだけでなく、空間づくりにおいても重要な役割を果たしています。
「冬は床暖房で過ごし、夏は気温が30度を超えることがないので、我が家はエアコンを入れていません。家電を減らしたことで生活感が薄れ、デザインの可能性が広がりました。」
明るい光が差し込む、吹き抜けの天井にあわせて大きくとった窓。遮光や断熱などの機能を、布に求める必要がないリビング・ダイニングの窓辺には、洋服を選ぶように、季節に合わせた軽やかな布を迎え入れます。
マルチクロスの〈14-23〉なら、1枚単位で選ぶことができるので、異なる素材やカラーを組み合わせて楽しめます。ダイニング側の窓辺に選んだのは、輝くシルバーのラインが美しい厚手の<〈PURE〉のグレーと、ほどよい透け感で暮らしを飾る薄手の〈TOSS〉のホワイトを。
リビング側には、落ち着いた明るいホワイトの厚手とグレーの薄手をセレクト。過ごす場所に合わせてカラーを選ぶことで、より空間を演出することができます。
肌触りのいいチャコールグレーの〈Re.nen〉は、ソファカバーとして使用。通気性のいい天然素材のリネンは、速乾性が高く、暑い夏でも快適に過ごせるのが特徴です。用途を限定しない〈14-23〉は、窓辺のカーテンだけでなく、暮らしのさまざまなシーンで活躍します。
「『L.L.Bean』のソファは、近所の古家具店で見つけたもの。現在では生産されていないヴィンテージの品なので、いい状態で出会えたのは幸運でした。中古のソファということもあり、布をかけることで安心感があって、気軽に模様替えも楽しめそうでうれしいです。」
「洋服だったら、色柄もたまに挑戦したくなるけど、家に使う布はなぜか無難なカラーを選びがち」という高橋さん。1枚でさらりと使える間仕切りは、カラーを取り入れやすいシーンのひとつ。パントリーの入り口には、〈KUFU〉のレッドを提案。強い印象を与えがちな赤色は、軽くやわからな質感のリサイクル糸を使うことで、ほどよく空間を彩ります。
玄関からサニタリースペースへ続く廊下には、シルバーのラメ糸が織り込まれている〈THIME〉を。太陽や照明の光によって変化する表情が美しい。マグネットタッセルの〈ムーブ〉と組み合わせて、軽やかに布をまとめることで、空間に動きをもたらします。
多目的に使えるように、ゆとりを持った広さのサニタリースペース。ドレッサー代わりに大きめの鏡を設け、朝の身支度はここで完結。販売する衣服のアイロン掛けや、ちょっとしたミシン仕事など、作業スペースとしても活躍しているそう。
森の景色が映る、勝手口のガラス戸にかけるのは、ソファカバーと同じ〈Re.nen〉のキャロット。身だしなみを整える場所に、カラーを取り入れることで、フレッシュな気分で1日を迎えられます。
「空間に馴染ませるだけでなく、アクセントになるようなアイテムを選ぶことも、大切だと気づきました。シーンによっては、むしろ鮮やかなカラーのほうが、暮らしにフィットするんですね。カーテンに限らず、マルチに活用できるという、今の時代にあったものづくりの姿勢にも共感しました。」
隣接する住宅との間隔を3メートル以上取ることや、伐採した本数だけ植樹を義務付けられていることなど、自然や景観を守るため厳しい規制がある軽井沢。この地で暮らし始めてから、高橋さんの環境への意識も大きく変わったと話します。
「引っ越し当初は周りに家もほとんどなく、それこそ森に住んでいるような感覚でした。そんなある日、窓の外に一匹の鹿が横切ったんです。ハッとしました。わたしたちが動物の暮らしの中にお邪魔している側なのだと。」
森に暮らし、当事者になることで生まれた“気づき”。「自然との共存」は、暮らしのテーマにもなりました。現在は、消費を繰り返す生活からは少し離れ、限られた収納スペースに収まるだけ、と持ち物を厳選し、衣服のリサイクルなど、循環する取り組みにも注目しているそう。
もうすぐ夏を迎える軽井沢で、粛々と日常を過ごす。自然に寄り添い、穏やかな時間が流れる森の家で、高橋さんの暮らしの探究は続きます。
14-23 TOSS (GR/WT)
リネンとポリエステルの糸をバランスよく混ぜ合わせ、軽くて心地よい光を取り込むしなやかなテキスタイル。
10,800円(税込11,880円)
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