異素材が調和する、静けさをまとった白の世界。
ある時は、光を取り込む窓辺に。
ある時は、食卓を華やかに彩るテーブルに。
ある時は、風合いの良さを肌で感じるベッドリネンに。
使う場所や⽤途によって、その布の表情はがらりと変わる。
さまざまな⼈びとの暮らしから、〈14-23〉がある⾵景をお届けします。
都内のメゾネット形式の賃貸住宅に夫婦で暮らす、インテリアスタイリストの谷山真季さん。白を貴重とした空間に異素材が同居する様子は、まるでギャラリーのよう。素材と向き合う谷山さんが、布の新たな一面を引き出します。
玄関のガラス扉を開けると、広がるのは、白を貴重にした開放的な空間。窓から差し込む光が部屋全体を巡ります。谷山さん夫婦が、この家に引っ越してきたのは今からちょうど1年前のこと。
「実は、以前の住まいもすぐご近所なんです。気に入っていたけれど、少し手狭になったため、仕事道具を納められる、広さのある家を探していました。そんな時、偶然ネットで見つけたこの家の内装に一目惚れ。戸建のように独立した部屋が連なる、メゾネットスタイルの2LDKで、先約も多く人気の物件でしたが、タイミングよく入居が決まりました。」
インテリアスタイリストとして、衣食住を中心にライフスタイルをスタイリング、提案している谷山さん。化粧品やアクセサリーなど小さなアイテムのディスプレイから、空間全体のスタイリングまで幅広く手掛けます。
集めるのは、家具や日用雑貨に限らず、形や色味が気に入ったものであれば、用途のない道具も、積極的にインテリアへ取り入れているそう。ホームセンターへ素材を探しにいくこともしばしば。
「子供の頃から石や木を拾い集めていたくらい、素材が好きで。ガラスやコンクリートから、建材として使われるようなプラスチックの波板にも心惹かれます。箱やエアパッキンなどの、梱包材も捨てずについ取っておくタイプです。」
ホームセンターで購入したコンクリートブロックは、空間のいたるところに活躍。
「ときめく素材に出会った時は、色味や質感が家の雰囲気に合うか、どんな組み合わせが気持ちいいか、常に考えています。」と、話す谷山さん。
モノの多さに比例して、視覚的な情報が増えすぎないよう、色味を抑えてバランスを調整しているそう。トーンの統一された空間は、生活感を感じさせないすっきりとした印象を与えます。
佇まいの美しい素材を迎えて飾る、お気に入りの景色。下駄箱として備わっていた、入口の収納棚には、お気に入りを並べてギャラリースペースのように活用しているのだとか。
「球体や立方体、円柱など、幾何学の形に惹かれます。石や、ガラス、金属、発泡スチロールなど、素材違いで統一された形状を楽しんでいます。」
玄関スペースと部屋を隔てる布は、和紙にアクリルコーティングしたざらついた素材感が特徴的です。
半透明の布の質感を生かしつつ、新たに迎えるのは〈KOMOREBI〉。愛用の布に重ね合わせることで、まるですりガラス越しに庭の樹々が映るように、空間にかすかに自然の気配を取り入れます。
「本物の木漏れ日が入り込んでいるようで、さわやかな印象が気に入りました。」
曖昧な影が作る抽象的なイメージが、空間が主体の暮らしにフィットします。赤いソファとのバランスも心地いい。
2階へ通じる階段には、透け感のある〈TOSS〉のグレーがさりげなく掛かります。マグネットタッセルを組み合わせて、軽やかで美しいドレープ感を表現。同じ色味の小物との相性も抜群です。
グレーに塗装したアクリルボックスは、もともと仕事用の什器として制作したもの。暮らしのなかでは、ルーターやコンセントなど生活感の出やすいアイテムの目隠しとして活用しています。好きな素材を並べ、ダイニングからの眺めを楽しんでいるそう。
家のなかでいちばん長い時間を過ごすダイニングは、こだわりの家具と過ごす癒しの空間。テーブルは、友人でもある佐々木家具造形研究所の佐々木さんに、フルオーダーしたもの。
「置く場所に応じ、どの比率だと美しいかを計算しつつ最適なサイズを提案してもらいました。天板の繊細な薄さと、手作業で作り込んだ線の細い脚との絶妙なバランスが美しいです。」
こだわりを詰め込んだテーブルに合わせるのは、ALIASのスパゲッティチェア。
「シンプルだけど、存在感のあるデザイナーズ家具が好き。椅子は体にフィットするPVC素材を使ったもの。長時間座っていても負担が少なく、機能面でも気に入っています。」
オリジナルのクリップを留めて、窓周りを飾るのは、ナチュラルで軽やかな印象を与える〈KINU〉。
シルクノイル糸とリネンを混ぜた肌触りのいい布は、日差しを遮りながら適度な光と明るさを取り込みます。
シルクノイル糸は、通常は廃棄される落ち綿を紡いだもの。一般的に想像するツルツルとしたシルクの素材感とは異なり、凸凹感のあるやわらかな風合いを持ちます。
暮らしにベストなサイズの14-23(マルチクロス)は、クリップをはずせば、窓辺以外のシーンにも軽やかに寄り添います。
肌触りのいい〈KINU〉は、ベッドのアクセントとしてのスプレットや、吸水・速乾性に優れチクチクしないため、軽やかな肌掛けとしても年間を通して活躍してくれます。
ベッドルームの隣にある小部屋の、仕事道具を収納する本棚の目隠しとして選んだのは、大胆なバイカラーが美しい〈Ahaha〉。
白い収納ボックスで統一した空間に、同系色の布を迎えて、まとまりのある印象が生まれました。
グレー部分を下にして使えば安定感をもたらし、逆にすると軽やかな雰囲気に。気分にあわせて上下を替えて楽しめます。
素材と、それをとりまく空間の美しさに、常に思いを馳せてきた谷山さんらしい自由な家づくり。ガラス、石、金属、プラスチック、そして布。日常に溢れるモノの、見過ごしがちな美しい側面に光をあて、暮らしの探究は続きます。