古材と緑に囲まれた、家族の時間を育む食卓。
ある時は、光を取り込む窓辺に。
ある時は、食卓を華やかに彩るテーブルに。
ある時は、風合いの良さを肌で感じるベッドリネンに。
使う場所や⽤途によって、その布の表情はがらりと変わる。
さまざまな⼈びとの暮らしから、〈14-23〉がある⾵景をお届けします。
無肥料無農薬の「うさみファーム」を運営する、宇佐美達也さん・見和さんご夫婦の住まい。長男の誕生をきっかけに、食への関心が高まり、農家に転職したふたりは、約10年前、東京から山梨県北杜市に移住しました。
現在、5人の子どもたちと愛犬と共に暮らす一軒家は、古材をふんだんに使って、家族が住みやすい形にリノベーション。風が巡る開放的な空間は、まるで森の中にいるような心地よさです。植物との相性もいい〈14-23〉が、食卓を涼やかに彩ります。
北杜市への移住後、数年は団地で暮らしていた宇佐美さん一家が、現在の住まいに出会ったのは、三女が生まれたばかりの頃。長らく家探しをしていたご夫婦の元へ、一軒の空き家情報が届きました。
「それは管理している畑のすぐ近くにある、築50年の二階建ての一軒家でした。立地の良さから、これもご縁と思い、購入を決めました。」と、達也さん。
農家に転身する以前は、解体業をしていたこともあり、大工さんと協力しながら家づくりを進め、スケルトンにする作業の傍ら、使えそうな素材を保管。障子枠や、玄関のガラスブロックを再利用し、現在の住まいに生かされています。
「リクエストを柔軟に受け止めてくれる大工さんで、新しい素材に古材を組み合わせながら、自由に作ってもらいました。扉や棚は造り付けのものが多いですが、古い椅子やテーブルとの相性も抜群。穴が空いていたり、傷や歪みがあったり、自然のなかで育まれたありのままの姿が美しくて気に入っています。」
購入から1年半かけて作りあげた住まいは、1階にダイニングキッチン、2階に家族の寝室を設けました。ほかに、衣服や子どもたちの学用品などを収納するスペースはあるが、生活空間は大きくこの2つだけ。
その代わり、階段下やパントリーなど、暮らしの隙間に椅子を置き、おこもりスペースに。子どもたちは、それぞれ自分が好きな場所に身を置き、本を読んだり、勉強に励んだり、自分の時間を過ごしているそう。
豊かな植物に囲まれ、住まいの主役でもあるキッチンは、見和さんのスケッチから生まれました。
「描いた通りに再現してもらったキッチンは、理想そのもの。収納スペースは、持っていた食器やカトラリー、調味料など、モノにあわせて細かく設計したので、無駄のないサイズ感が使っていて気持ちがいいです。」
キッチン横の窓辺には〈BAUMKUCHEN VOILE〉のナチュラルをさらりと。外の景色を望める透け感のある布は、どんな空間にも溶け込みやすい。優しいラインの間から入る光は、季節によって違う表情を浮かべます。
料理を作っている時間が何よりも好きだという見和さんは、家にいる時間の大半はこのキッチンで過ごす。暮らしの中心に佇むキッチンから、いつでも全体を見渡し、家族の様子はもちろん、空間を賑やかに彩る植物への細やかな気配りを欠かしません。
天井を上げ、剥き出しになった鉄骨には様々な植物が吊るされています。
キッチンからダイニングに抜ける通路には、鮮やかなキャロットカラーの〈Re.nen〉を。単体だと主張の強いカラーも、マクラメ編みのカーテンバランスと組み合わせれば、オリエンタルな印象でまとまり、空間に一体感が生まれます。
「リネンは硬くてシャリ感のある印象でしたが、使い込んだ後のような、やわらかい風合いが新鮮でした。カーテンバランスとの組み合わせも、とても好みなデザインです。」と、ご夫婦揃って話します。
扉の取手に使うアイアンは、地元の作家さんによるもの。階段にも大工さんの手によって、共通の世界観を施している。味のある歪みが、空間に遊び心をもたらしています。
畑で育てた野菜やハーブを使い、家族で囲む食卓を大切にしている宇佐美さんご夫妻は、近年、農業や食を通じた新たな仕事に挑戦しているそう。
これまで得た知識や技術をもとに、広い視点を持ってより多くの人々と関わっていきたいと話す達也さん。一方、見和さんは、調理師免許の取得を目標に動き始めたのだとか。
「お店を持って料理で表現をするというより、もっと日常に近い部分に、料理の魅力を感じていて。子どもたちやご年配の方々、いろいろな人の心と体を育て支えていく日々の食事を作ることに関わりたいと思っています。」
「農業や子育ての時間がなければ、こんなにも料理が好きになることはなかったです。」と、話す見和さんは、意外にも、夫婦で生活をはじめるまで、料理の経験はほとんどなかったという。
家族が増える前までは、夫婦で海外へ遊びに行くことも多かったそう。バックパックひとつでアジアを旅したり、フランスで蚤の市を散策したのも楽しい思い出のひとつと話します。
「玄関の土間にかけている布は、インドの旅から持ち帰ったもの。初日に訪れた雑貨店で見つけ、夫婦揃って一目惚れ。古いサリーをパッチワークのようにしてつなぎ合わせたものらしく、大判で丈夫。最後まで旅を支えてくれました。」と、達也さん。
装飾に限らず、日常的に布を愛用しているという宇佐美さんご夫婦。祖父母宅や実家で使われていた品や、お土産にもらったアフリカの布も、今では暮らしに寄り添うアイテムです。
植物や古材とも相性がよく、清涼感のある暮らしの布を、シーンに合わせて取り入れてみました。
玄関からダイニングへ続く空間をゆるやかに仕切るのは、きらめくシルバーの糸を織り込んだ〈THIME〉。時間を意味する「TIME」とハーブの「THYME」を名前の由来に持つ布は、朝焼けの森の中やチカチカと光る砂浜など、自然の美しさからインスピレーションを得て生まれたこともあり、植物との相性は抜群です。
「一見シンプルな布ですが、見る角度によってきらきらと輝く、さりげない美しさがとても気に入りました。透け感があるので、圧迫感なく空間を仕切れるのもいいですね。」と、見和さん。
土間へ続く玄関扉は、古い扉に古材を継ぎ足して間口を広げたもの。存在感のある扉を引き立てるのは、軽やかな〈TOSS〉のホワイトと、パッチワークの〈REMAKE TEX〉です。
薄手で明るい色味の布を扉の前にかけることで、日差しを和らげ、涼しく実用的。軽く結べば、暮らしに緩急がついて、風通しもいい。
ieno textileの新たな試みでもある〈REMAKE TEX〉は、〈TOSS〉のホワイトと〈from earth-MIZU〉の端材を組み合わせた夏らしい一枚。気分で上下を入れ替えても楽しめます。季節によって、着替える感覚で布を楽しめるのも、〈14-23〉の特徴です。
窓辺にも玄関と同じ〈TOSS〉のホワイトを。植物に必要な光は通しつつ、熱をほどよく遮断します。部屋の印象も軽やかにしてくれる、おすすめの一枚です。
家族の寝室として使う2階のワンルームには、アイボリーとグレーの色違いの2枚の〈BAUMKUCHEN〉を重ねて、空間を仕切ります。入り口からは明るく軽やかな印象に、部屋の奥へ進むと、落ち着いたグレーのトーンが心地よい眠りを誘います。
「当初から仕切れることを前提に作った部屋ですが、布で仕切るアイディアはなかったです。クリップで止めるだけで、模様替えも簡単。かける場所によっては、個室を作るようにも活用できそうです」と、〈14-23〉の気軽さに驚く達也さん。
木の温もりが感じられる住まいに、素材をシンプルに生かした〈14-23〉はよく馴染む。空間を飾るインテリアとして、そして実用的な暮らしの布として、健やかな日常を支えます。
夕方、5人の子どもたちが帰宅し、家は賑やかに。見和さんは、子どもたちを迎える傍ら、定位置のキッチンに立ち、おやつのパンを焼き始めました。
オーブンから漏れる香ばしい香りに包まれ、家族の時間が流れる。ダイニングを走り回る子どもたちのうしろで、風を受けた布がふわりと翻ります。