日本の「布と家」のお話。 Interior Lifestyle Tokyo 2023
ある時は、光を取り込む窓辺に。
ある時は、食卓を華やかに彩るテーブルに。
ある時は、風合いの良さを肌で感じるベッドリネンに。
使う場所や⽤途によって、その布の表情はがらりと変わる。
さまざまな⼈びとの暮らしから、〈14-23〉がある⾵景をお届けします。
本編で23回目を迎えた「14-23のあるくらし」は、これまで様々なお家に伺い、自然と暮らしに寄り添う〈14-23〉がある風景をお届けしてきました。
今回は久しぶりの番外編としてieno textile主宰の南村弾より、今年の6月に東京ビックサイトで行われたインテリアの展示会「インテリア ライフスタイル2023」のトークショーイベントでも、ご好評をいただいた日本の「布と家」のお話をさせていただきます。
当日は、リノベーション事業を展開している「リノべる。」の田形梓さんにご参加いただき、多角的にお話を進めていきました。この本編でも田形さんのご意見や資料をお借りしていますので、ぜひご覧ください。
いつもどうもありがとうございます。ieno textileの南村弾です。
いきなりすごく個人的な話ですが、これまでヨーロッパなどのミーティングで「日本の建築は有名だけど、日本のインテリアはどんな感じ?」って挨拶のように聞かれる場面が多くありました。
しかし残念ながらほぼ答えることが出来ないまま来てしまいました。うーん、どこか少し悔しい感覚です。
この質問が心の奥にずっと眠っていたコロナ禍のある日、ieno textileのお客さん家にお邪魔(ご取材)する企画(14-23のあるくらし)が始まりました。
少しずつ日本の暮らし・家事情を知るにつれて、布のデザインや扱い方に変化があったことが我ながら意外でもあり、その質問の答えに近づくように感じました。
田形さんのご自宅も2022年8月にご取材をさせて頂き、現代の日本の素敵な暮らしの象徴だと思いました。ご家族の好きなことや物を暮らしに取り込むこと、家づくりでやりたいこと、素材の整え方などを書いた家づくりメモは、特に興味深い方法でした。
撮影の日は40℃くらいの酷暑だったけど、お部屋の中はとても快適で、なめらかな空気が印象的でした。家づくりメモにも、断熱+スマートホームって書いてありますね。
取材でお邪魔したほとんどのお家の方も家づくりで重要視したことを断熱と仰っていました。
布やデザインから少し話がそれますが、豊かな暮らしを送るうえでこれからは本当に断熱が重要な時代です。暮らしをデザインするうえで、断熱性能を大事にする「リノべる。」さんらしい資料をご用意いただきました。
「まず最初は、日本の省エネ意識の図です。(以下 青文字は田形梓さんより)」
「2022年の資料ではございますが、世界的な燃料価格の高騰に加え、不安定な気候により、家庭内での電気使用量が増えるなど、年々省エネへの関心は高まっているように感じています。」
確かに、省エネ意識は多くの方が持っていますね。
「続いては、日本の断熱意識に関する調査です。」
「住まいの断熱が省エネにつながることに、何となく気づいていても、実践する方は残念ながらまだ少ないのが実情です。しかし内容を知るとその効果に驚かれたり、より興味を持ってくださる方が多くいらっしゃいます。」
断熱意識の低さは情報量の問題もあるようですね。
「3つ目に用意したのは、YKK APさんの資料ですが、窓の断熱効果に関する図です。」
「これは驚く方も多くいらっしゃると思います。冬は半分の熱が窓を通して外に逃げていき、夏は暑い熱が74%も中に入ってきます。これを見ると窓の断熱がどれだけ重要なのか分かると思います。」
屋根や床、壁からも空気が出入りしますが、何よりも窓から多く出入りしていることは驚きですね。
「4つ目は、日本と諸外国の断熱レベルを比較した図です。」
「このグラフは、縦が断熱基準を表していて、下に行けば行くほど断熱基準が高いことを示しています。これで見ても、実は、日本の省エネの基準は他の国よりも低いことがわかります。お隣の韓国も、温暖な気候のカルフォルニアも、住宅における基準が日本よりずっと高いことがわかります。」
北海道とカリフォルニアの断熱レベルが同じとは、すごい意外ですね。
「そうなんです。日本も最近は省エネへの対策を様々な角度から講じていて、国を挙げて省エネキャンペーンなども行なわれていますので、これから住まいを考える方は、ぜひ調べてみてください。」
是非活用しましょう!文化や気候も違うので一概に比較はできませんが、日本の暮らしを良くする余地があることはわかりました。
ヨーロッパは断熱性能がそもそも高く、断熱を気にしなくて済むから、インテリアを考える視点が日本とは違うとも言えますね。断熱性能があがることで、インテリアを楽しむ余地が増えるとも考えられます。
日本はこれまで断熱を布(インテリア製品)に中途半端に頼ってきた?のかもしれません。
「そうですね。私も家づくりの時に断熱性能に重点を置きました。特に窓は二重サッシにしたので、カーテンを選ぶ時は機能性を考えずに、好きな色や好きな素材で自由に選ぶことができたので、とても楽しかったです!」
日本の文化や住宅環境、断熱性能などを踏まえつつ、〈14-23〉を取り入れていただいた皆さまのお家の写真で日本のインテリアはどんな感じか?を見ていきたいと思います。
皆さまの暮らしの中で、〈14-23〉の思いもよらない使い方も増えていてびっくりしました。
本日は布の壁・布の扉・窓の布・暮らしの布の4つの場面に分けました。
まず1つ目の場面は布の壁についてです。布の壁は場所の領域をゆるやかにつくります。
1・既存の壁をなくして布をかけると、抜け感があります。
2・デザインされた暮らしの布感が最高です。
3・透過する柔らかい質感が空間を和らげます。
4・風や光、気が通るのが見えます。
2つ目の場面は布の扉についてです。布の扉は場所で質や色を決めるとまとまります。
1・クローゼットがクローズしない軽やかな透ける扉です。
2・見えないけど、気配がわかる扉です。空間に奥行きが生まれます。
3・食器棚にも意外なほど、布の扉は相性が良いです。
4・家の扉を全部、布の扉に、色や質で使い分けています。
ついに家の布もここまできたか、と感慨深いです。
3つ目の場面は窓の布についてです。カーテンぽいけどカーテンではなく、窓の布です。
1・窓とクローゼットと実は同じ〈14-23〉です。優しく光を取り込みます。
2・1の空間でクローゼットの布を変えると、すごくシャープな印象に。
3・集中力を高める白と心落ち着くナチュラルのバランスの良い使い方。
4・色の組み合わせはいつでもわくわくします。
4つ目の最後の場面は暮らしの布です。なんだか懐かしい感じもしますが、大事な場面です。
1・質や色が味に与える影響
2・質や色が眠りに与える影響
3・質や色が心に与える影響
やっぱり素敵な皆さまの暮らしです。改めて皆さまのおかげで〈14-23〉が育っています。
これまで答えることが出来なかった、この質問の答えが見えてきたように思います。
日本には2つの軸のインテリアが常にあるのかもしれません。
1つは布に「断熱性能を持たせるインテリア」、もう1つは断熱性能の良い家は「布使いが上手なインテリア」と、今後は答えることが出来ます。
日本の「布と家」、とっても良い感じに発展してきました。最後までご覧いただき、どうもありがとうございます。
次回は普段の「14−23のあるくらし」です、すてきなお家にお邪魔しています。
どうぞ今後とも宜しくお願い申し上げます!