心地よさを纏って。「つくる」と「つかう」を考える、布の家。
ある時は、光を取り込む窓辺に。
ある時は、食卓を華やかに彩るテーブルに。
ある時は、風合いの良さを肌で感じるベッドリネンに。
使う場所や⽤途によって、その布の表情はがらりと変わる。
さまざまな⼈びとの暮らしから、〈14-23〉がある⾵景をお届けします。
「なんか、いい感じ」を共有してくれる人の元へ、気持ちのいい「家のテキスタイル」を伝え届ける布の専門店として、2014年6月にスタートした〈ieno textile〉は、この度10周年を迎えました。
これもひとえにieno textileの布をお選び頂き、布のあるくらしを楽しんで広めてくださった
皆様のご支援があったからこそと深く感謝申し上げます。
今回は10周年記念の特別編として、〈ieno textile〉を主宰する南村弾の暮らしから、そのストーリーを綴ります。
テキスタイルクリエーターの南村弾がどのように布と出会い、〈14-23〉が生まれたのか。
プロローグとなるストーリーはこちらからどうぞ。
都内のマンションの一室に、南村弾の暮らす家があります。妻と2人の娘と暮らすその家は、新築の住まいでも、リノベーションした中古マンションでもない。築38年、普通の賃貸のマンションです。
しかし、ひとたび足を踏み入れると、さまざまな色や柄を取り入れ、オリジナルな空間を築く、まさに「布の家」。
寝室には、みずからデザインした布と共に、インドのボロ布がかかります。
「窓辺の奥側には、インドの昔のボロ布でつくるパッチワークをかけて、手前は〈14-23〉の残布でつくるパッチワークを。国も時代も異なる2つのパッチワークを組み合わせています。最近は世界の布製品を混ぜて取り入れることが新鮮で楽しく、ものづくりとしての学びも多いです。」
リビングには、家族の誕生年のタペストリーをつなげた南村家オリジナルのパッチワークも。
「新しくつくる布は、必ず家で試してから商品化しています。洗濯して軽く使用感を試すものから、色落ちが気になるものは長い時で3年ほど試すこともあります。」
現在、お店で扱うのは30種ほどの布ですが、以前はその10倍の300種を取り扱っていたため、家のなかは常に商品で溢れていました。
「商品の基本を14-23に絞ることで、家のなかにも余白が生まれました。ヴィンテージの布やラグ、ランプシェードなど、自分たちが気に入った布ものを積極的に迎え入れ、〈14-23〉と組み合わせを楽しんでいます。お客さんの家では、ほかの布と組み合わせて使う人も多いので、よりリアルな暮らしのなかで商品を試せるようになりました。」
名前の通り、約140cmx230cmで展開する〈14-23〉は、南村弾が1999年から試作品の布を試しながら使い、試行錯誤の末に辿り着いた暮らしのベストサイズです。
上部を折って好きな長さに調整できるので、窓のサイズも選びません。クリップでとめるだけで気軽に窓辺を飾ることができます。ラフに付け替えられるので、洗濯も簡単。
同色で並べるだけでなく、1枚ずつ好きな色の布を選べるのが〈14-23〉の魅力のひとつ。季節や気分にあわせて、色物や柄物を取り入れれば、空間のアクセントに。洋服を選ぶように、自分だけの組み合わせを見つけてみてください。
1枚の布がカーテンとして変身する道具として、欠かせないクリップ。ieno textileでは、形も素材もさまざまな12種類のオリジナルクリップを展開しています。
布と窓辺をつなぐクリップは、ささやかながらも遊び心のあるものを。
商品をつくる時に余った布を活用した〈セジールボタン〉は、今では定番商品のひとつです。ひとつひとつ色柄が異なるボタンは、シンプルな布にあわせるのがおすすめ。
クリップとあわせて使いたいのが〈マグネットタッセル〉。横へ束ねたり、下から裾をまくるようにとめたり、使い方次第でさまざまな布の表情を楽しめます。
ハンドメイドの紐で編み上げた〈ムーブ〉は、マグネットで留めて、紐を引くことで束ねる度合いを調整できる、機能的で新しいデザイン。
下から空気を取り込んだり、ペットの通り道として開けたい時、布の長さを調整するのにも便利なアイテムです。
冷気が気になる子供部屋の窓辺には、左右それぞれ2枚の〈Re.nen〉を重ねて。1枚でさらりと掛ける時とはまたちがう重厚感が出て、表裏で変わる色合いも美しいです。ちなみに南村家では、子供部屋で使う布は娘たちに決めてもらっているそう。
「白や黒中心のシックな洋服やインテリアが好きな娘たちですが、最近はピンクにハマっているらしく、部屋のなかも可愛らしい雰囲気に。限られたスペースのなかで、インテリアを楽しんでいるみたいです。」
窓以外でも使いやすいサイズ感の〈14-23〉は、テーブルクロスやベッド・ソファカバー、タペストリーなど、さまざまな場所で活躍します。さらに活かせる場として見つけたのが、天井でした。
「リビングの電気の光を調整したくて、試しに天井にピンで止めてみたら、想像以上にいい感じになりました。壁や天井の固い素材のなかに、柔らかい布の要素を混ぜることで、バランスよく空間に馴染みました。」
「ミニマルなタイプで、私物が少ない」という南村弾ですが、玄関に掛かる愛用のサーフボードは、すっかり生活の一部になっています。大好きな海を感じられるスペースに、合わせるのは商品化前の〈Re.nen〉のボールド。間仕切りに鮮やかなカラーを迎えることで、暗い廊下も明るい印象に。
「世界にあるいろんなアイディアを少しずつ集めて、混ぜたらいい。僕自身のテーマはそこにあります。好きなものを集めた結果が暮らしになる。」
そんな風に前回のインタビューで話していた南村弾ですが、自身がずっと前から好きだと語るデザイナーとしてフィリップ・スタルクを挙げ、彼のつくる椅子や照明を暮らしに取り入れています。
お気に入りのアイテムは、ものづくりのヒントになる。これに合うのはどんな布?どうやって組み合わせよう?
アイディアの種は、いつも日常のなかにあります。
そして、日常でみつけたアイディアから生まれたのがこの〈SEIRO〉。
「キッチンにかかる蒸篭をみて、蒸気を通すのに理にかなった形は、布にとっても光や風を心地よく通してくれるのではないか、と気づいたんです。プロダクトとして完成された道具を、一枚の布にしてみたらどうなるだろう?そんな好奇心から生まれた布です。」
定番の調理道具が、暮らしの布の道具に。何気ない日常の景色をインスピレーションに、カーテンやテーブルクロス、ランプシェードにと、暮らしのさまざまなシーンを飾る〈SEIRO〉は生まれました。
住まいの一部屋は布専用。日々、さまざまな布をつくり、試している南村家では、洋服を掛けるようにハンガーで収納しています。
さらに、クッションはクッション用の棚へ。商品や購入したアイテムを織り交ぜながら、使わない時は飾ってもインテリアになる工夫を。
クッションは、実はハンドメイドのアイテムも展開しています。インドの職人がつくるテキスタイルやパーツを、組み合わせたデコレーションクッション〈GA〉と〈BA〉です。
存在感のあるアイテムは、暮らしのアクセントにおすすめです。
「最近、額装にハマっていて。以前、商品としてつくっていた布は、収納するのではなく、額縁にいれることで、形を変え、新たなインテリアとして活かしています。」
「風景写真のクッション生地は額装して、いまはシンプルに風景画として楽しんでいます。写真が布になり、一度役目を終え、また写真として空間を飾っているのが面白いですよね。」
「以前、出演したNHKの『世界はほしいモノにあふれてる』にて、スペインの撮影時につくった布を額装して、アルバムのように、その時の感情や感覚を閉じ込めました。」
「妻は直感的に気に入ったものや、子供たちが使わなくなったおもちゃも額装しています。額にいれることで新たな価値が生まれ、暮らしのなかで存在感を発揮します。それらを布とのバランスを大事にしながら、空間を飾っています。」
ひとつのサイズに統一し、定番化することで、不必要になる部分がかなり減り、無駄のないものづくりを可能にしている〈14-23〉。それでも、商品をつくる際には、どうしても余ってしまう切れ端がでてきます。
「縫製工場にお邪魔した際に、『NAMURA残布』と書かれた箱を見かけました。その時に気が付かなければ、知らないうちに捨てていた布たち。そんな残布をつなぎあわせ、この度〈RemakeTex〉として、商品の展開を始めました。」
単体の布とはちがう、ミックスされることで生まれる個性豊かなデザイン。数量限定品で、入荷時期も不定期ですが、ぜひお気に入りを見つけてください。
「ieno textile」は、気持ちのいい「家のテキスタイル」を伝え届けて10年。
たとえば、都会のマンション一室で。山の麓の大きな一軒家で。海のそばに佇む小屋で。つかう人によってさまざまな表情を見せる〈14-23〉。時代にあわせて生活スタイルが変わっていくなかで、それでもいつも誰かの「定番品」として、暮らしに寄り添う布であれたらうれしいです。
これからも、「なんかいい感じで、心地よいこと」をテーマに、ieno textileのものづくりは続いていきます。