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古い家でも快適に。暮らしながら社会とつながるエコハウス。

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ある時は、光を取り込む窓辺に。
ある時は、食卓を華やかに彩るテーブルに。
ある時は、風合いの良さを肌で感じるベッドリネンに。

使う場所や⽤途によって、その布の表情はがらりと変わる。
さまざまな⼈びとの暮らしから、〈14-23〉がある⾵景をお届けします。

 

古い家でも快適に。暮らしながら社会とつながるエコハウス。

ieno textile,長野県諏訪市,リビゼン

長野県諏訪市で、古材と古道具を販売するリユースショップ「リビルディングセンタージャパン(リビセン)」を、夫の東野唯史さんと共に経営をしている華南子さん。夫婦と息子の3人で暮らすのは、空き家をリノベーションし、快適さを追求してつくられた「エコハウス」。

暮らしを飾る古道具は、どんなシーンにも馴染むマルチクロス〈14-23〉との相性もよさそうです。古いものの価値を見出し、現代にアップデートする家づくりの先には、自由でおおらかな暮らしがありました。

 

古材をレスキューし新たな価値を生み出す

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「私たちはもともと『medicala(メヂカラ)』という空間デザインのユニットとして全国各地でお店づくりをしていました。空き家や古い建物をリノベーションしながら空間をつくり、足りない資材は解体現場から出る古材で補っていたんです。街の資源を循環しながら空間づくりに生かすことで、次第に街づくりそのものに関わることも増えていきました。」

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そんな活動の最中に結婚した東野さん夫婦は、新婚旅行先としてアメリカ・ポートランドの街を訪れました。内装の勉強や街づくりの参考になると考え、選んだ場所でした。そしてふたりは「リビルディングセンター」と出合います。

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「不用品や古材を販売するだけのジャンクショップではなく、“ものを大切に使いつづける文化”が根付いていて、日本にもこういうお店があったらいいのにと思いました。それと同時に、今の私たちにはそれにトライする素地があるのでは、と思ったんです。」

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アメリカの旅から1年後の2016年、ふたりの手によって「リビルディングセンタージャパン」が誕生しました。家屋や工場の解体現場からレスキュー(買い取り)した古材や古道具を販売するほか、オリジナル家具やリノベーションの資材として新たな価値を生み出しています。

 

偶然たどり着いた「諏訪」という地

ieno textile,長野県諏訪市,リビゼン

諏訪を代表するお店として精力的に活動するリビセンですが、この地でお店を開いたのは偶然だったそう。

長野で暮らすようになって10年。幼い頃から父の転勤に合わせて国内外を転々としてきた華南子さんにとって、ひとつの場所に定住するのは人生初めての経験だと話します。

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「『medicala(メヂカラ)』として最初にリノベーションを手がけたのが、下諏訪のマスヤゲストハウスでした。当時、持病のアトピーが出なかったこともあって、この土地が体に合っているのかも、と感じていました。」

現場中心の生活で、ほとんど帰ることがない都内の家賃を払い続けるのはもったいない、という気持ちから、プロジェクトが終わった時点で移住を決意。ちょうどその頃、リビセンを立ち上げることになり、そのまま諏訪を拠点に生活がはじまります。しかし、寒冷地での暮らしは想像より過酷なものでした。

 

時代や環境にあわせて、快適に住み継ぐ

ieno textile,長野県諏訪市,リビゼン

「会社を立ち上げてから1年くらい、古い家で暮らしていたのですが、冬は起きたら室温がマイナス10度。立ち上げたばかりの会社を経営しながら、寒さを我慢する不自由な生活が続き、最終的には体調を崩してしまいました。」

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そんな華南子さんの体を心配した唯史さんが、家族が健康に心地よく暮らせる家として見つけたのが「エコハウス」でした。高性能の断熱を施すことで、年中通して快適な温度を保ち、エネルギー消費が少なく済むので環境負担も減らせる。

しかも、それが新築ではなくリノベーションで叶うと知り、断熱の勉強の末に家づくりがはじまりました。

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住まいに選んだのは、築95年の空き家。これまで実践してきたリノベーション知識に、断熱の考え方を取り入れ、設計、解体から仕上げまで自分たちの手がけた「エコハウス」が完成しました。

これまで多くの店舗を手がけてきた唯史さんですが、住居の設計ははじめての試みでした。とはいえ、お店づくりと同じように「リビセンらしさ」を感じるこだわりが要所に詰まっていました。

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「床にはこの家を解体する時に使っていた古材を再利用したり、足りなかった部分は他の古材を織り交ぜながら使っています。壁には近郊の解体現場からレスキューした土壁の土を漆喰と混ぜて塗りました。家具や収納はほとんどがリビセンの古道具。ゲストルームとして活用するロフトにかかるハシゴもそうですね。売り場に置き場がないものを家で使うことも多いです。」

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エコハウスで暮らし始めて4年。これまでにない快適さですっかり体調もよくなったという華南子さん。真冬は氷点下だった室温も、今では20度を下回ることはほとんどないそう。もちろん夏も心地よく、家のどこにいても快適な温度で過ごせるのは、想像以上の心地よさだといいます。

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さらに、子供が生まれたことで、「古い家」だからこその暮らしやすさも実感しているのだそう。

「子供が床に物を落としたり汚したりしても気にならないし、おおらかな気持ちで過ごせるんですよね。壁に穴を開けたり、DIYなんかも気兼ねなくできるので、環境の変化にあわせて空間を自由に作り替えることもできます。試行錯誤を日々しながら暮らすのが本当に楽しいです。」

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「家が必要になった時に、古い家にそのまま暮らしたり、解体して新築するのではなく、『快適に住み継ぐ』という新しい選択肢を、私たちの生活を通して提案していけたらと思います。」

 

古材は社会問題を解決するツール

「古いものが好きだし、生活にも取り入れていますが、懐古主義的なことをやりたいわけではないんです。」と、華南子さんは話します。

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「わたしたちにとって古材や古道具は、愛着を感じる物だとか、センスよく空間を飾る道具というより、社会問題を解決するアプローチの手段なんです。捨てられてしまう物を引き継ぎ、現代の生活に活かしていくことと、高性能の断熱を学んで、環境負荷を減らす家に暮らすことは、どちらも社会問題と自分たちをつなぐ大切なテーマだと思っています。」

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「冬の暖房には薪ストーブを使っていますが、薪に使うのも古材や廃材なのでエコだし、気持ちがいい。省エネで快適なエコハウスは、寒冷地だけでなく、夏の暑さを乗り切るためにも、全国に必要な性能だと思っています。」

 

何を買うかではなく、どう手放すか

古いものに価値を見つけられるようになった一方で、新しいものを買うハードルが高くなったそう。

「ほしいものがあっても、どうやって手放すかというところまで考えると、買うまでに至らないことが多くなりました。新品で買うのは、作家さんの器など決まった趣味のものや、汎用性の高いものを選んでいます。」

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古道具はまさに汎用性の高いもののひとつだといいます。「昔の日本の生活にあわせた規格のものも多く、そのままだと使いづらいですが、使い方に縛られなければ、便利で心強いアイテムなんです。常にストックがある木箱やカゴは、調味料入れやブランケット、ぬいぐるみなどの収納として活用しています。」

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古道具以外にも、汎用性の高さが気に入っていると紹介してくれたのが「kitta」のshikifu。ピクニックシートや子どもの布団、風呂敷など便利な道具として使えるだけでなく、肌寒い時は身に纏えば衣服としても役に立つそう。

「出かける時には欠かさず持っていくくらい、すごく助けられています。子どもが小さい時だけでなく、大きくなってからも使えるので、出産祝いとして人に贈ることも多いです。」

 

制限があるから生まれる自由

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〈14-23〉もワンサイズという制限があるからこそ、自由なアイディアで窓辺やダイニング、寝室に迎えいれることができます。

定期的に模様替えを楽しむメインの生活空間には、夏らしく爽やかなカラーの布を提案します。リビングの窓のサイズに合わせて、縦と横のどちらの向きにも使えるのが〈14-23〉の魅力のひとつ。カーテンのように使い方が限定されず、あらゆるシーンで暮らしに寄り添います。

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「以前は窓にカーテン代わりに適当に買った布を切りっぱなしで使っていたので、丈夫でデザイン性も良いマルチクロスという選択肢があるのはうれしいです。」

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薄手の〈TOSS〉は、軽くて心地よい光を取り込むしなやかな布。ライムとネイビーを組み合わせ、色鮮やかに空間を飾りながら、窓に映る風景も楽しめます。さらに、マグネットタッセルを使えば、布に動きが生まれます。

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カーテンとは違い、1枚ずつ好きな色を取り入れられるので、オリジナルな窓辺をつくることができます。模様替えのタイミングで、季節や気分にあうカラーを選ぶのも楽しい。透けすぎない素材感なので、夜でもほどよく視界を遮ってくれます。

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リビングとキッチンの間に、1枚布を持ち込むだけで、ほどよく空間を仕切ることができます。かけるのは調理道具からインスピレーションを受けた〈SEIRO〉。もちろん、キッチンとの相性は抜群です。

ieno textile,14-23 SEIRO,間仕切り,カーテン

自然な色合いで、適度な光沢感を持つ〈SEIRO〉は、さまざまな素材や質感と合わせやすい一枚です。心地よい光や風を通すパターンで、圧迫感なく空間に寄り添います。

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キッチンのパントリーには、薄手の〈TOSS〉のライムを。リビングの窓辺と同じ布でありながら、光に透けた時の印象とはまた違う表情で、空間を明るく見せます。

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「洋服のように家具も明るい色を選びたいという気持ちもありながら、家に迎えるのは無難な色を選びがち。でも布を使えば、気軽に色を取り入れながら空間づくりを楽しめるんですね。」

 

断熱を考えたら、家事動線がよくなった

「ちゃんと住まいに目を向けたことがなかったから、家づくりをはじめたときは暮らすイメージが湧かなかったんです。でも断熱を最優先に考え、仕切りがなく回遊できる間取りは、結果的に家事動線もよくストレスフリー。水回りからクローゼットまで直線でつながるので、洗濯から収納までも楽ちんです。」

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「冬は乾燥しやすいので、浴室は加湿器代わりに使っています。」と、エコハウスらしいアイディアも。

清潔感のあるサニタリールームには透明感のある〈TOSS〉のピーチを。 モルタルと木の素材でシックにまとまった空間のアクセントとして活躍します。

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洗面ボウルに使うのも古道具。防水塗料を塗った蕎麦の「こね鉢」だそう。

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サニタリールームから続く、寝室。古材を組み合わせた印象的な壁は唯史さんによるもの。ベッドには肌触りもいいリネン100%の〈Re.nen〉のイエローをコーディネートしました。

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寝室のドアには、薄手の〈KOMOREBI〉を迎えいれます。写真や絵を飾るように、空間に遊び心を取り入れて。

 

暮らしを見直すことが、仕事につながる

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エコハウスで暮らしと、一児の母としての生活が同時にスタートしたことから、家の仕組みづくりについても夫婦で話し合う機会が増えていきました。暮らしやすさを考えることは、仕事にもいい影響を与えているそう。

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「月に1度は家と向き合う時間をとっています。どうやったら暮らしやすくなるか、ストレスはどこにあるか課題をあげていく。子どもの成長にあわせて環境を変える必要があったり、生活動線を考えるうえで、模様替えをする機会も多いです。小さなことだとゴミ箱の位置を変えるだけで改善されることも。」

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暮らしを見直した結果、「ここにこういうものがほしい」が出てくる。そしてそれは、古道具が解決してくれることが多いそう。

「生活するなかで古道具の新たな使い方を見つけ、リビセンのSNSで発信する。暮らしを良くしようと考えたことが、仕事にもフィードバックされるので、すごく効率がいいですね。」

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暮らしながら生活を整えていくなかで、当初は玄関とリビングの間に設置していた扉は、なくても快適に過ごせると判断して撤去したそう。普段は開放的に過ごし、とくに寒い日や夏場のエアコン効率を上げたい時だけ、布をかけるのもおすすめです。

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ツートンカラーが美しい〈Ahaha〉は、端材や残糸からリサイクルされた厚手の布。玄関からの冷気や視線が気になる時に、さっとかけることができます。

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カーテンレールがない場所でも、〈ディスプレイリング〉をポールやワイヤーなどに、通すだけで気軽に設置できます。

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飾り棚を設置する予定だったという玄関横の開口。物の受け渡しなど、意外と便利でそのまま使っているそう。布をかければ生活感をほどよくおさえ、よりやわらかな印象に。ソファやクッションのテキスタイルとも心地よく馴染みます。

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心地よさは、自分でつくっていく

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「もっとこうだったらいいなと思うこともあるけど、今のところは家具変えたり、配置変えることで、暮らしやすさを作っていける感覚がある。」

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時代に合わなくなった古道具に、新たな価値を見出すように、古い家も現代の暮らしに合わせてアップデートしていくことで、快適な暮らしを叶えられる。

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「心地よさは自分でつくっていける、と思える場所でありたい。」

道具を受け継ぎ、家を住み継ぎ、新たな景色をつくっていく。その先にある豊かさを信じて、おおらかな気持ちで、暮らしについて考える。

 

 

person / Kanako Azuno

edit & write / Arisa Kitamura

photo / Yukihiro Shinohara
古い家でも快適に。暮らしながら社会とつながるエコハウス。

TASSEL テラッゾ

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