故郷に思いを馳せる、光と影が巡る家。
ある時は、光を取り込む窓辺に。
ある時は、食卓を華やかに彩るテーブルに。
ある時は、風合いの良さを肌で感じるベッドリネンに。
使う場所や⽤途によって、その布の表情はがらりと変わる。
さまざまな⼈びとの暮らしから、〈14-23〉がある⾵景をお届けします。
ライフスタイルデザイナーとして活躍する宇藤えみさんは、2年前、自然豊かな場所での子育てを求め、都内から神奈川県葉山町への移住を決めました。現在、家族4人で暮らす家は、偶然出会った築30年の一軒家をリノベーションしたもの。
窓の向こうに見える、穏やかな海は故郷・愛媛の景色を彷彿とさせます。取材に訪れたこの日は、ちょうど海開きのタイミングでした。雨上がりに顔を出した夏の日差しと共に、軽やかな布が暮らしに心地いい風を運びます。
長い坂道を登った先にある、2階建ての一軒家。2階にある玄関から入ると、海を目の前にした開放的なリビングダイニングが広がります。西向きの窓からは毎日、水平線に夕日が沈む瞬間を眺められ、さらに天気のいい日には、海の向こうに富士山の姿が浮かびます。
「愛媛で生まれ育った私は、昔から都会への憧れが強く、スタイリストという仕事を選びました。好きなものに囲まれた東京での暮らしは刺激的で、なにひとつ不自由なく、毎日楽しかったです。けれど、結婚して子供を持つことで、自然の近くにある暮らしを恋しく思う気持ちが強くなっていきました。」
コロナ禍に突入して、暮らしのスタイルも変化していくなかで、家族がもうひとり増えることもわかり、都内からもほど近い葉山で新居を探し始めます。当初は、新築の家を建てるつもりで契約まで進むも、売主側の都合で白紙に。移住人気が高く、土地の値段も高騰していくなかで、諦めかけていたところ、現在の住まいに出会います。
「西向きの古い家は朝日も届かず暗い印象でしたが、海を見下ろす眺望が、故郷の風景とも重なり、すっかり気に入りました。」
とんとん拍子に購入が決まると、知り合いの建築士に依頼し、既存の間取りをベースに住み良くリノベーション。2022年11月に完成した住まいで、念願だった自然に囲まれた場所での子育てがはじまりました。
海まで歩いて5分。子供たちが遊んでいる間に、近くにテントを張ってコーヒーを飲む。休みの日にはお酒を飲んだり、お弁当を持ってみんなで食べることも。道路に飛び出す心配や、子供の騒ぎ声を気にすることが少なくなり、親も子もリラックスして過ごす時間が増えたそう。
「同じタイミングで移住した友人も多いので、休みがあう日はお互いに料理を持ち寄って、ご飯会を開く機会も増えました。市場にいけば魚やお野菜など、季節に合わせた新鮮な食材が並びます。都内と違い、いつでもほしい食材が買えない不便さはありますが、子供と過ごす日々にとって、旬が目に見えることは嬉しい変化でした。なにより採れたてのおいしさにはいつも感動します。」
リノベーションするにあたって、テーマにしたのは「光と影」。開口部分が少なく、午前中は日差しが入らなかった空間から、仕切りをなくし、天井にも窓を作ることで、一日中光が巡る空間に生まれ変わりました。夜になれば照明の影が壁に映り、美しい陰影が生まれます。
理想の住まいはすっかり完成したように見えますが、実はまだ道半ば。「今後は手付かずの庭を整備し、木を植えることで、ゆらめく木漏れ日を暮らしのなかに取り入れられたらと計画しています。」
普段は窓辺にカーテンを使わず過ごしている住まいですが、今回、明るい光が差し込む開放的な空間はそのままに、暮らしのアクセントとなるような〈14-23〉をご提案させていただきました。海が見える家には、軽やかな質感の布がよく似合います。
ダイニングの窓辺には、軽やかながらも、程よい光沢感を持つ〈THIME〉をかけます。チカチカと光る砂浜をイメージしたテキスタイルは、海を望む景色との相性がいい。程よい透け感なので、お気に入りの景色を遮ることなく、西陽を心地よく調整してくれます。
家族のみんなで囲うダイニングテーブルには、麻100%の〈Re.nen〉のチャコールグレーをさらっと。丈夫で厚みもあるため、テーブルクロスとしても活躍します。ご家庭でもお洗濯できるので汚れを気にせず使えます。
温かみのある落ち着いた色味で、いつもの食卓が特別な空間に生まれ変わります。
「布のやさしい質感は、木の家具との組み合わせでも、馴染みやすさを感じました。照明には和紙を使っているので、やわらかな素材同士、相性がいいですね。」
スタイリストとして、料理や器を美しく見せるテーブルコーディネートも仕事のひとつ。仕事や暮らしで使う器は、すべてキッチンまわりにおさめています。サイズにあわせてつくった収納は、まさに器のクローゼット。
「引っ越しのタイミングで、何年も使っていないものは処分しました。このスペースに収まらなくなったものは、人に譲ったりしながら、なるべく溜め込まず、ものが循環することを意識しています。」
さらに、1日の長い時間を過ごすキッチンには、季節を感じられるアイテムをディスプレイ。撮影時は夏らしいガラスの小物が飾られていました。「飾り棚に使うのは、最近出会った古具です。奥行きが狭い、コンパクトな佇まいが気に入っています。」
ダイニングの壁はアートを飾るスペースとして、塗装したラワン材を貼ることでシーンを切り分け、ギャラリーのような空間を演出。飾るのはパリのアーティストによる作品。この家が持つ、「土と海」のイメージに近いことから、2種類のポスターを引っ越しのタイミングでお迎えしたそう。
開放的な空間はそのままに隠したい場所には、1枚布があるだけで生活感を感じさせない、すっきりとした空間に落ち着きます。
人やモノの出入りの多い玄関には、優しいツートンカラーの〈Ahaha〉を。丁寧に手入れされたグリーンとも相性がよく、ご家族を心地よく迎え入れます。
1階の洗面台と階段の間にかけるのは、透明感のある〈BAUMKUCHEN VOILE〉のナチュラル。動線の視野を確保しつつも、軽やかに空間を仕切り、暮らしのシーンを切り替えます。
もともと建築士が暮らしていたというこの家。自分で設計したであろう空間は、間取りや窓のサイズも特徴的だったといいます。
「1階のゲストルームや子供部屋には、カーテンをいれたかったのですが、窓にあうサイズのものがなく、断念していました。」と悩みを打ち明ける宇藤さん。
ワンサイズの〈14-23〉なら、ポールにさらっとかけるだけでも必要十分。窓のサイズに関係なく取り入れることができます。
ナチュラルな木の素材と色味でまとめた子供部屋の窓辺に迎えたのは、〈TOSS〉のネイビー。アクセントになるカラーを取り入れることで、遊び心を感じさせる空間に仕上がります。
同じ悩みがあった、ゲストルームの窓辺に迎えたのは、フランス・パリの空気感を持つ〈MERCI〉。ほのかに浮かびあがるストライプで、シックな印象に。軽やかな質感で、朝の日差しを心地よく迎え入れます。
ポールに〈ディスプレイリング〉を通すことで、カーテンレールがない場所でも、気軽に窓辺の布を楽しめます。
ベッドには〈LA〉のグレーを。ふっくら優しい肌触りの生地は、ペットボトルから生まれた再生繊維でつくりました。ほのかな光沢感は、光と影をテーマにした宇藤さんの家に心地よく寄り添います。
そして、入り口には〈PURE〉のホワイトがかかります。光沢が美しいシルバーのラインは、重なる波を思わせます。同系色の布でまとめたコーディネートは、心地よい眠りに誘う、穏やかな空間を演出します。
窓辺だけでなく、開放的な空間をゆるやかに仕切りたい時にも、〈14-23〉は役立ちます。
リビングとダイニングの間仕切りには、天然素材のシルクとリネンをバランスよく混ぜ合わせた〈KINU〉を。厚手ながらも軽やかな質感と色合いで、圧迫感なく空間を穏やかに仕切ります。
「カーテンレールのない窓辺や通路にも突っ張り棒にかけて、クリップで留めるだけで簡単に取り入れられる。その気軽さがすごくいいなと思いました。」
移住してから、車に乗る機会も増えたという宇藤さん。都心へ出るまで1時間の距離は、仕事のオンオフを切り替える上でもちょうどいいといいます。暮らしを充実させることで、仕事への向き合い方も変わってきたそう。
「都内にいると、良くも悪くも多くの情報が入ってくるので、常に仕事に追われている感覚がありました。少し距離を持つことで、暮らしに割く時間が増え、それが巡り巡って今の仕事にも生かされています。」
自然のなかで遊んで育つことで、五感を育んできた宇藤さん。一方で、洋服が好きで、雑誌を何度も読み込んで、ファッションの世界に憧れたことも大切な体験だったと話します。
「自然とカルチャー、両方に触れられる機会を持つことが大切だと感じました。子供たちにとっても、都心と葉山を結ぶ1時間の距離が、ちょうどいい刺激になってくれると感じています。」
暮らしはじめてから、外からでは見えなかった、新たな葉山の魅力に気が付きました。
「観光客で賑わうシーズンが終わると、静かな秋がやってきます。まだ少し暑さの残る海辺で、焚き火をしながらのんびり過ごすのが、本当に気持ちがいいです。住んでみて初めて知った、海の楽しみ方でした。」
今年も海が静けさを取り戻す頃、家族で過ごす海辺の暮らしは3年目を迎えます。