暮らしをデザインする、無駄のないものづくり。
ある時は、光を取り込む窓辺に。
ある時は、食卓を華やかに彩るテーブルに。
ある時は、風合いの良さを肌で感じるベッドリネンに。
使う場所や⽤途によって、その布の表情はがらりと変わる。
さまざまな⼈びとの暮らしから、〈14-23〉がある⾵景をお届けします。
都⼼に暮らす⼈、⼭の麓に暮らす⼈、海沿いに暮らす⼈
布を接点に、さまざまな人々の生活にふれていきます。
第一回目は導入編として、テキスタイルクリエーターの南村弾がなぜ〈14-23〉に至ったのか、そのストーリーを綴ります。
家業は祖父の代から続くファブリックメーカー。母親は染め物アーティスト。子供の時から、気づけばいつも身近に布があった。そんな南村弾が、仕事として布を意識するようになったのは、1999年のこと。父親と訪れた、世界最大のインテリアテキスタイルの展示会〈ハイムテキスタイル〉がきっかけでした。初めて訪れたヨーロッパで見た光景は、その後の人生に大きな影響を与えました。
「知恵熱が出るくらい感動しました。日本で見てきたインテリアとは全く違う世界が、ヨーロッパには広がっていました。」そこから初めて家業に目を向け、学んだグラフィックを生かしてインテリアの道へ。手描きのイラストから始まり、次第に写真を布に落とし込んだ表現へとデザインの幅を広げていきました。
若手デザイナーとしてインテリア業界で注目されるようになってきたある日、転機は訪れます。きっかけとなったハイムテキスタイルにて、インテリアの流行を仕掛けるトレンドセッターの一員に抜擢されたのです。アジア人として初となる快挙でした。
「トレンドに携わるようになり、ヨーロッパの文化や暮らしについて深く知るようになりました。たとえば長い冬を過ごす北欧では、憧れを追いかけるように、季節を先取りして春の布で室内を満たします。ドイツでは、視界を遮るものではなく、窓辺を飾る布として、ほとんどの家のカーテンが開け放たれていました。季節や気分でラフにインテリアを変えるヨーロッパの暮らしを見ながら、日本でももっと気軽に布を楽しんでほしい、という思いが次第に強くなっていきました。」
戦後、瞬く間に成長を遂げた日本の住宅建築。団地の登場によって、カーテンは規格化されたなかで、作られるようになります。その後、暮らしや建築が変化していくなか、現在まで規格化されたものづくりを続けるカーテン。洗練された家具や空間に、窓辺の景色だけが昭和で止まったまま。
デザインだけではなく素材や使い方から、より暮らしを意識した形に変えていきたい。そんな思いから生まれたのが〈14-23〉シリーズです。
「日本の暮らしでは、カーテンを選ぶのがすごく難しいんですよね。家を建て替えるサイクルが早く、窓のサイズもさまざま。引っ越しが多い方だと毎回使い捨てになってしまうし、長く住む家だと無難なものを選んで、何年も掛けっぱなしになっている方も。だったら、窓のサイズに合わせて仕立てる必要がなく、気分によってラフに付け替えられる、一枚の布があればいいんじゃないかと思ったんです。」
名前の通り、140cm ×230cm四方の布は、クリップでとめるだけで気軽に窓辺を飾ることができます。上部を折って好きな長さに調整できるので、窓のサイズも選びません。ラフに付け替えられるので、洗濯も簡単。ベーシックなものを中心に、1枚だけ色物や柄物を取り入れれば、空間のアクセントに。洋服を着替えるように、季節や気分に合わせた布で暮らしを彩ります。
「一般的に、カーテンには光や視線を遮り、空間の断熱・保温の機能を求めますが、別の機能をデザインする余地もあるはず。たとえば、透け感のある素材で柔らかな光を取り入れたり、鮮やかなカラーで空間に立体感を与えたり。僕にとっての心地よさは数字じゃ表せない部分にあるんです。」
窓以外でも使いやすいサイズ感の〈14-23〉は、テーブルクロスやベッド・ソファカバー、タペストリーなど、さまざまな場所で活躍します。
「インド人はサリーやターバンなど、布を道具として使うことが多いですよね。日本でも布を道具として暮らしに取り入れる方法があるはず。作りたいのは、”デザインされた布の道具“なんだと思います。世界にあるいろんなアイディアを少しずつ集めて、混ぜたらいい。僕自身のテーマはそこにあります。好きなものを集めた結果が暮らしになる。それがきっとこれからの日本らしいインテリアだと思います。」
「布は洗うことで、ほこりを落とし、繊維の劣化を防ぐので、断然長持ちします。だから作る布は洗えることが大前提。我が家でも、窓辺を飾る〈14-23〉は、季節に合わせて変えるタイミングで、必ず洗濯をしています。」
素材や使い方をさんざん家で試し、納得がいったものだけを商品化する。そんな繰り返しのなかで、デザイン性や意匠性の強すぎる布は、家での仕様頻度が低いことに気づきます。もともと300種類以上あった布は、生活のなかで使いやすいものに絞られていき、現在は30種類ほど。1/10の展開に収まった商品は、すべてが“定番品”として、棚に並びます。厳選された〈14-23〉シリーズが、どんな暮らしにも自然と溶け込むのは、作り手自身が一番の使い手でもあるから。
「カーテンをデザインしているのではなく、使い勝手のいい布をクリエイションしているんです」と南村弾はいいます。デザインから、素材そのものへ、ものづくりの興味が移り変わっていくなか、注目したのは、”リサイクル生地“でした。
「ファブリック業界は、目まぐるしくトレンドが変わり、大量生産・大量消費を繰り返してきました。サイズ規定の厳しいカーテンは、とくに捨てる部分が多かった。それが何よりネックでした。ひとつのサイズに統一し、定番化することで、不必要になる部分がかなり減り、無駄のないものづくりが可能になりました。」
「普通にカーテンを作ろうとすると、余分な生地が出てしまう。それを一度綿に戻して、糸にし、また生地にする。これまでリサイクル生地(糸)には、かならずポリエステルやコットンなど違う素材が混ざっていたのですが、最近になってひとつの素材を取り出してリサイクルできるようになったんです。「Re.nen」は、スペインで作っている布ですが、リネン100%のリサイクル生地。ぱりっとした新品のリネンの生地と比べて、ふわっとした質感で、柔らかく理想の風合いを実現することができました。」
無駄のないリサイクル生地(糸)は、今はまだ新品と比べて価格が抑えやすく、高価なリネンも手軽に取り入れられる。その一方で、縮みやすく、日焼けしやすいなどの、デメリットもあります。そのため、リサイクル生地(糸)は、劣化しにくい厚手の布に使用し、肌に触れても心地いいやわらかな風合いを。薄手の布は、ポリエステルと新品のリネンを混ぜ、張りのある生地で光をしなやかに取り込む。イエノテキスタイルでは、それぞれの特徴を生かした生地で、暮らしに馴染む布を提案しています。
「リサイクルの技術自体は、実はそんなに新しいものではなく、日本では150年も昔からすでにありました。第二次世界大戦で日本が負けて、返却された軍服をリサイクルして、瓦礫を片付けるのに必要なロープや手袋が作られました。軍手の名前の由来はそこにあります。綿をリサイクルして作る”特紡“というこの生地(糸)は、祖父がファブリックメーカーを始めるにあたって使った最初の布でもあります。資源に乏しかった当時は仕方なく選んだ生地だったと聞きました、僕にとっては、日本で作れる無駄のない理想的な布なんです。」
無駄のない素材から生まれ、使う場所によってさまざまな表情を見せてくれる「14-23」。布を取り入れることに抵抗を感じる人々に、軽やかにその楽しさを教えてくれます。
「多くの人にとって、今は特にデザインやトレンドより、“生活でどう使われているか”の方が知りたいし、気になる部分だと思うんです。布を接点にさまざまな国の文化を受け入れ、使い方を取り入れていけたら、いつか日本らしい暮らしが見つかるんじゃないかな。〈14-23〉を通して、“なんかいい感じ”って、思ってもらえる布と出会いを楽しんでもらえたらうれしいです。」
14-23 from earth - KOMOREBI
強い日差しを遮ってくれる心地よい木や葉を木漏れ日。軽くて心地よい光を取り込む、ちょうど良い透け感のしなやかな薄手の布を開発してプリントしました。
10,800円(税込11,880円)
ONLINE SHOP14-23 Re.nen (NL)
リネンの生地の製造過程でどうしても出る布の端材部分や糸の残りを集め、リサイクル技術を活かし再活用した植物を原料にしない新しい発想の質感が良く丈夫なリネン100%のスペインならではの厚手の布です。
10,800円(税込11,880円)
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