手触りを楽しむ、床に近い暮らし。
ある時は、光を取り込む窓辺に。
ある時は、食卓を華やかに彩るテーブルに。
ある時は、風合いの良さを肌で感じるベッドリネンに。
使う場所や⽤途によって、その布の表情はがらりと変わる。
さまざまな⼈びとの暮らしから、〈14-23〉がある⾵景をお届けします。
夫とふたりの子どもと暮らしながら、設計事務所を営む織田さん。第二子の誕生をきっかけに、手狭になった賃貸を離れ、2023年春から新たな住まいでの生活が始まりました。
自ら設計を手がけた住まいは、家全体にカーペットを敷き詰め、どこにいてもごろんとくつろげる“床に近い暮らし”を叶えました。
光がやわらかくめぐる空間を、軽やかに仕切るのは〈14-23〉の布。季節ごとに掛け替えながら、住まいに彩りを添えます。
家族が増え、これまでの賃貸住宅が手狭になったこと。そして「身軽でいたい」という思いから、住み替えも前提にした中古マンションのリノベーションを選んだという織田さん。
子どもの成長やライフスタイルの変化によって将来また住み替える可能性もあると考え、できるだけフットワーク軽く暮らせる選択肢を重視したといいます。
「建築士としても、これからは既存ストックの活用がますます重要になると思っていて。古い建物には味わいがあるし、ゆったりしたつくりのものも多いんです。」
物件を選ぶ際には、耐震性や断熱改修のしやすさなど、建築士ならではの視点も大切に。いくつもの要素を天秤にかけながら、暮らしの拠点を探していきました。
そして見つけたのが、築48年の現在の住まいです。
「光と緑をたっぷり感じられるこの場所なら、今の自分たちにフィットする暮らしを組み立てられると思いました。」
「床に座っても、ごろんと寝転んでも心地よい。そんな家にしたかったんです。」
カーペット仕様のやわらかな床は、靴を脱いだ瞬間から始まります。裸足で歩けばあっという間にその心地よさの虜に。用途に縛られない自由さと、冬は暖かく夏はさらっと過ごせる快適さがあります。
「学生時代は和室中心の団地で過ごしたのですが、畳の部屋はリラックスできて、1つのスペースを多目的に使える良さがありました。」
そんな原体験をベースに目指した “床に近い暮らし”。現代のライフスタイルにあわせ、選んだのがウール100%の〈堀田カーペット〉です。リビングから廊下まで、水回り以外のスペースに敷き詰められています。
テーブルやソファも一般的な高さより低めに設計し、床に座る人とも目線が合いやすいように工夫。あまり家具を置かない代わりに、大きなテーブルで食事や仕事・勉強、団らん、おもてなしなどさまざまなシーンに対応しています。
どこでも寝転べて、自然と家族の距離が近づく空間。回遊する間取りと、カーペットの床で、柔軟性のある暮らしを実現しました。
メンテナンスについては意外にも「あまり汚れに過敏にならなくても大丈夫」と話す織田さん。ウールは撥水するので、汚れた瞬間に軽く拭き取っておけば、掃除機をかける時に、カーペットの中に織り込まれている「遊び毛」が汚れを一緒にからめとってくれるのだそう。
生活動線を考えた、回遊性をもたせた間取りは、玄関からリビング、キッチン、脱衣所へとぐるりと回れる設計になっています。どの空間にいても緑や光を感じ取れるように、〈14-23〉の布でゆるやかに仕切ることで、間仕切りを最低限に抑えました。
「既製カーテンだと、裏面が気になってしまいますが、〈14-23〉は裏表がないので、仕切りの布として使うのにぴったりです。」
色と透け感を選べる点もお気に入りで、空間ごとに布を使い分けているそう。季節や気分にあわせて掛け替えながら、暮らしにリズムを与える存在としても機能しています。
主に空間を仕切ることを目的に〈14-23〉を取り入れている織田さんですが、今回、新たにリビングの窓辺にも迎えていただきました。
織田さんが選んだのは、シンプルなデザインながら機能性も高い〈SEIRO〉。
「リビングの窓には透け感のある大きなカーテンをかけるイメージが最初からありました。リノベ前は窓の上に壁掛けエアコンがついてたのですが、床置きエアコンに変更し、すっきりととした窓辺にしました。」
エアコンを床置きにすることで、天井からまっすぐ布が垂れる美しい窓辺に。
蒸篭の底のような柄の部分は、透け感があり、窓辺で使えば光と風をほどよく室内に取り込みます。
外からの視線があまり気にならない環境であれば、単体で使っても一年中快適に過ごせる、頼れる暮らしの布です。
リノベーション時に、布で仕切ることを前提に天井に設置したカーテンレール。一本の線のように描くレールは、布をかけない時も、主張せず空間に溶け込みます。
間仕切りとして新たにご提案するのは、上下で異なる素材感を楽しめる〈Ufufu〉。透けるホワイトと透けにくいグレーのセパレートデザインです。
その時の空間の使い方に合わせて、上下を入れ替えることで、光の入り方や視線を遮ることができます。
間仕切りとしてだけではなく、もちろん窓辺でも活躍します。
季節や気分にあわせ上下を入れ替えて、空間にアクセントを。シンプルなデザインで暮らしに寄り添いながら、快適さを保つ一枚です。
通常、約140×230cmのワンサイズの〈14-23〉ですが、実はサイズオーダーやカスタムメイドも可能です。
織田さんのご希望でカスタムメイドした〈KINU〉は、通常「マスタードイエロー」か「ミント」のステッチを、空間のテーマカラーである「モスグリーン」に変更。ステッチの色を変えるだけで、空間の魅力をさらに引き立てます。
建築士という仕事柄、あたらしい素材を日々試してみることが多いという織田さん。自邸は、そんな実験精神が存分に発揮された空間でもあります。
「自分で使ってみてどう感じるか、どこに取り入れたら素材の良さが活かせるか。お客さまにも提案できるよう素材の探求を楽しんでいます。」
たとえば、織田さんの作業スペースであるデスク横の仕切りは、光が届くようにメッシュ素材に。
さらに、寝室のヘッドボードには吸音性もある〈abode〉のフェルトボードを使用。さらに、その端材を加工してバスマットにするなど、工夫とアイデアが随所に光ります。
寝室の収納スペースに使うのは、無印良品のユニットシェルフ。高校生の頃から使い続け、夫のものと合体させながら20年以上愛用しているそう。
オープン収納の目隠しとして、選んだのは厚手の〈Ahaha〉。
透けない素材でしっかり生活感を隠し、落ち着いたカラーリングは眠りにつきやすい優しい空間を演出します。
リサイクルの技術を活かした、やわらかな質感は、空間の中でさまざまな素材と相性がよく穏やかで優しい印象を与えます。マグネットタッセルを合わせて使えば、モノの出し入れもスムーズに。
「14-23もユニットシェルフも、場所や環境を限定しない、しなやかな存在。暮らしの道具として、これからも長く連れ添えたら」
空間デザインだけでなく、自身で手を動かすことが好きだという織田さん。壁のにはポーターズペイントを使ってセルフペイントを施しています。
素材の探求やDIYなど、実験を繰り返しながら家づくりを楽しんでいます。
「人って、光の差すほうを向くんですね。この家に来てから、子どもも含めて窓の方をぼーっと見ていることが増えました。」
日当たりのいい窓辺に家族が集まり、時々ごろんと寝転びながら、それぞれの時間を静かに過ごす。そんな光景が、日常のなかに定着しつつあります。
明るく風が通る住まいは、自然と心と身体をひらいてくれる。どこにいても気づけば視線は光の方へ。緑が濃くなる窓の外に、夏の気配を感じ始めながら。