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自然と共存する、小さな暮らしに見つけた豊かさ

ある時は、光を取り込む窓辺に。
ある時は、食卓を華やかに彩るテーブルに。
ある時は、風合いの良さを肌で感じるベッドリネンに。

使う場所や⽤途によって、その布の表情はがらりと変わる。
さまざまな⼈びとの暮らしから、〈14-23〉がある⾵景をお届けします。

 

自然と共存する、小さな暮らしに見つけた豊かさ

森へ続く丘の上、生い茂る緑のなかに、ぽつんと佇むちいさな家。フィンランドのサマーコテージをお手本に、自然に寄り添う暮らしを体現した「山村テラス」です。前回、登場した「月夜の蚕小屋」のリノベーションを手がけた岩下大悟さんが、最初に作った空間であり、ゲストハウスを運営するきっかけとなった、セルフビルドの小屋。小さな空間で、踊るようにゆらめく〈14-23〉は、景色にリズムを生み出します。

 

ゲーム感覚で始めた小屋作り

長野県佐久市で生まれた岩下さん。大学を卒業後は、地元で就職。サラリーマンをしながら数年を過ごしました。それまで建築の経験があったわけでもない彼が、空間づくりを手がけるようになったきっかけは、何だったのでしょうか。

「20代の時、 “出会って10周年だし特別なことをしようよ”と、高校時代の友人たちと始めたのが、小屋作りでした。今みたいにYouTubeもない時代、参考にしたのは、うちの親父が持っていた『ログハウスマガジン』という古い雑誌。使う道具はのこぎり一本。当初の予定では、ゴールデンウィーク中に完成して、最終日には宴会をしているはずでしたが、そう上手くいくわけもなく。連休が終わる頃、やっとの思いでできたのは、ぐちゃぐちゃな基礎だけ(笑)」

その後、夏の終わりまでかけて、なんとか雨風をしのげるくらいのものにはなりましたが、北風が吹く頃にはすっかり熱意も失い、小屋作りは中断されました。しばらく経って、その存在も忘れかけていた頃、岩下さんはかねてより計画していたフィンランドへ、ひとり旅に出かけます。勤めていた会社も辞め、目指すものもなく、これからどう田舎で生きていくか。そんな未来の暮らしのヒントを探す旅でもありました。

 

フィンランドで過ごした夏の風景

「夏に訪れたフィンランドでは、週末になるとみんな田舎のサマーコテージで過ごしていました。コテージといっても日本の別荘とは少し意味合いが違っていて、もっとワイルドな感じ。自然のなかに身を置くために、電気も水も通っていないところが多く、水道代わりにポリタンクに貯めた水を使い、夜になればろうそくに火を灯すような生活を送っていました。川や湖のそばに建てた小屋は、小さいながらも必ずサウナが付いています。僕の滞在先の主人も、古い家を改修しながら、時にはサウナを楽しみ、自然と共にひっそりと暮らしていました。そこにはこれまで体験したことのない、心地いい時間が流れていました。」

ほぼ自給自足の暮らしのなかで、岩下さんはふと、あの小屋の存在を思い出します。電気と水がなくても、十分快適に過ごせるのか、と。フィンランドの地を訪れ、「森の中に作った小さな空間で暮らす」というイメージが、初めて明確に浮かびあがりました。

「実は小屋を建てている当時も、これこそ自分が探していた“田舎でしかできないこと”なのではないか、という感覚がありました。けれど、完成が近づいても、そこでどういう時間を過ごせるのかは、全く見えてこなかった。たまたま訪れたフィンランドのコテージで、夏を楽しく過ごしている人たちの姿を見てやっと、箱の外側だけでなく、内側のイメージを持てるようになりました。求めていた暮らしへの道筋が見えたんです。」

帰国後、岩下さんはフィンランドの記憶を再現するように再び小屋作りに没頭。完成した小屋は、そのまま自らの住まいとし、森の中での暮らしが始まります。電気は太陽光発電でまかない、水道の代わりに沢の水を引く。必要最低限の空間は、結果的に「オフグリッドな暮らし」を体験できる場になり、地域のコミュニティスペースとして活用したり、「Airbnb」に登録してからは海外からの訪問者に貸し出すことも増えていきました。岩下さんは、いつしかこの場所のことを「山村テラス」と呼ぶようになっていました。

 

豊かな自然を家の中に持ち込む

森に佇む小屋の中には簡易的なキッチンと、ダイニングテーブル、ソファに、ストーブ、窓辺にデスク、屋根裏のようなロフトには布団が一組。小さな空間、けれど窮屈さはなく居心地がいい。

仕切りのないワンフロアに、さらりと透ける布をかけると、コンパクトな空間にメリハリができ、不思議とゆとりが感じられます。ランプシェードに使う布「KOMOREBI」は、心地よい木々や葉の写真をプリントしたもの。部屋の中にも自然を持ち込み、穏やかな緑は窓の外の景色ともリンクします。

テラスにつながる扉を全開に、外と内がつながる境界に垂らす「Re.nen」は、端材をリサイクルして作る丈夫でしなやかなリネン100%の布。ふわりふわりと揺れる様子は、風と踊っているようです。

「天然素材の麻は、もっと硬くてごわごわしたイメージでしたが、触れてみるとびっくり。こんなにやわらかいものなんですね。なんども使い馴染んだ布のようで、色あせた床や壁とも馴染み、まるで初めからそこにあったみたいに自然な光景です。カーテンだけでなく、間仕切りやテーブルクロスにも使いやすそう。」と、普段はあまり布に親しみがなかった岩下さんも、その汎用性に関心を寄せます。

 

自分の暮らしから、誰かの暮らしへ

「コロナ禍以前のお客さんは、ほとんどが海外の方。日本とちがって休暇が長いから、東京や京都など観光地を巡ったあと、疲れた体を休めるようにこの場所を選んでくれる方が多いみたいです。近くのスーパーで食材をたんまり買い込んだ後は、お酒を飲みながら数日間、小屋の中でゆっくり過ごされていますよ。」

理想の田舎暮らしを追い求めるうちに、思いがけずはじめた空間づくり。岩下さんは、2014年から、住まいを別に移し、正式にゲストハウスとして「山村テラス」の運営をスタートします。現在は、4つの空間を運営するオーナーとして、人と自然をつなぐ空間を築き、その土地に根付く社会や文化を、新たな視点とともに継承しています。

「空間づくり、なんていうけど結局は自分が住みたい場所を作っているだけ。自分がそこで、誰とどういう時間を過ごしたいか。結局は、誰かのためではなく、自分との対峙なんです。」

森へ続く丘の上、生い茂る緑のなかに、ぽつんと佇むちいさな家。木漏れ日が映る布はゆらめき、自分のためだけに熱いコーヒーを淹れる。日が沈むまで本でも読もうか。そこにはただ静かな時間が流れています。

 

place / 山村テラス
 
edit & write / Arisa Kitamura

photo / Yukihiro Shinohara
自然と共存する、小さな暮らしに見つけた豊かさ

14-23 Re.nen (WT/MNT)

リネンの生地の製造過程でどうしても出る布の端材部分や糸の残りを集め、リサイクル技術を活かし再活用した植物を原料にしない新しい発想の質感が良く丈夫なリネン100%のスペインならではの厚手の布です。

9,800円(税込10,780円)

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自然と共存する、小さな暮らしに見つけた豊かさ

14-23 TOSS (NY)

リネンとポリエステルの糸をバランスよく混ぜ合わせ、軽くて心地よい光を取り込むしなやかなテキスタイル。

9,800円(税込10,780円)

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自然と共存する、小さな暮らしに見つけた豊かさ

14-23 BAUMKUCHEN VOILE (NL)

透けにくい自然な厚みの場所と良く透ける場所の特性を活かした、横ストライプのどんな空間にも解け込むテキスタイル。

8,800円(税込9,680円)

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自然と共存する、小さな暮らしに見つけた豊かさ

LAMP SHADE from earth - KOMOREBI

心地よい木々や葉の柄が、空間に自然を持ち込む美しいランプシェードです。

25,300円(税込27,830円)

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