暮らしに四季を、健やかに日々を飾る花と布。
ある時は、光を取り込む窓辺に。
ある時は、食卓を華やかに彩るテーブルに。
ある時は、風合いの良さを肌で感じるベッドリネンに。
使う場所や⽤途によって、その布の表情はがらりと変わる。
さまざまな⼈びとの暮らしから、〈14-23〉がある⾵景をお届けします。
出張花屋として生花店PAUSEを営む吉原友美さん。特別な日だけでなく、日常的に迎えられるような季節の草花を通して、心が安らぐ風景を届けています。ある夏の日、軽やかな布と共に、千葉県印西市に構える吉原さんのアトリエにお邪魔しました。花に囲まれたちいさな空間で、〈14-23〉はどんな表情を見せてくれるでしょうか。
生花を生業にするようになって3年目。ちょうどコロナ禍に暮らしが脅かされ始めた、2020年よりPAUSEはスタートしました。それまで忙しく日々を過ごしていた吉原さんにとって、「小休止」を意味に持つこの屋号は、自分に向けたメッセージでもあったといいます。
「11年間、多肉植物を仕事に夫婦で活動していましたが、夫とのお別れを機に私は多肉を離れることに。とにかく一回休もう。そして、もう一度自分の好きなものを見つめ直そう、と。結局、選んだのはやっぱり植物でした。」
“生花”という新たな切り口で、改めて植物と向き合うことにした吉原さん。「動き続ける方が自分らしい」と、お店を開くのではなく、出張花屋として、各地を飛び回っては、花を届けています。
花屋がない場所で、テーブルを置き、布を敷き、色とりどりの花を並べる。あらゆる街の景色のなかで、暮らしに気軽に取り入れられる、季節の花を扱います。また月に一度、さまざまなジャンルの作家さんとコラボしたセットを届ける「お花の定期便」も好評です。お菓子やキャンドルと合わせて、ちいさな自然は暮らしに寄り添います。
「お花ってどうしても贅沢品と思われてしまいますが、なんでもない日にさっと飾れる存在であってほしいんですよね。特別な日にもらうなら、真っ赤なバラもうれしいですが、日常にあるとちょっと落ち着かない。目にも鮮やかな花ではなく、身近な草花に近い、食卓に一輪あるだけでふと心が癒されるような花を提案しています。」
PAUSEでセレクトする花は、とくに色合いを大切にしています。それは多肉を扱っていた頃からすると、大きな変化でもありました。
「ブーケにもなる生花は、束ねた時の色合いが大切ですが、慣れないうちは苦労しました。自分の好きなものだけ選ぶと、どうしても地味になってしまう。普段は選ばないような、明るい色をアクセントに混ぜ込むようにすると、奥行きが生まれ、全体の印象がぐっと良くなりました。今では季節ごとに変わる花の色を楽しんでいます。」
色味をベースに直感的に花を仕入れるという吉原さん。色の組み合わせを考えるのが好きだと話す彼女の原点は、意外にも「布」にありました。
「学生時代から、布が大好きで、よく日暮里の繊維街に通ってはお気に入りの布を切り貼りしてコレクションしていました。何かに活用するとかではなく、純粋にその色や質感を楽しんでいたんです。」
自宅では〈14-23〉を食卓や窓辺に取り入れて、花との相性の良さを実感していると話します。
今回は、花に囲まれたPAUSEのアトリエにて、夏らしい軽やかな布を迎えてみました。軽やかに揺れる〈14-23〉は、爽やかな植物と共に、小さな空間を飾ります。
テーブルに広げた〈PURE〉は、リサイクル繊維を用いたシンプルなベースに、シルバーの光のラインが美しい表情を作り出す一枚。
小窓に垂らすのは、残糸を再活用したリサイクル糸と、ポリエステル糸の2種類を使用する〈BAUMKUCHEN VOILE〉。透ける質感は、空間を遮断せず、やわらかく外と中をつなぎます。優しい光を灯す〈TOSS〉グレーのランプシェードと合わさって、上品な空間を演出します。
「透ける質感は、ほどよく光を取り込んでくれて、植物とはもちろん、グレーの壁とも相性がいいですね。」
天井まで届く開放的な窓には、ナチュラルな〈THIME〉を。折り込んだシルバーの糸が、光の加減によってきらきらと輝き、見るたびその印象が変わります。
「こちらの布も、自宅で愛用しています。その日の天気や時間帯によって変わる表情が気に入っています。」
布にしなやかな動きをもたらすのは、磁石を使って束ねるマグネットタッセル〈ムーン〉。アクセントのイエローと木の優しい質感はナチュラルな空間によく馴染みます。
さて、窓辺にはもう一枚、〈Re.nen〉イエローも取り入れてみました。涼しくなってきたこの頃、秋の訪れを感じるこっくりとした深みのある色合いは、空間に温かみを与えます。
ガラス越しに映る、美しい布。シンプルな小屋に、鮮やかなイエローが映えます。庭に育つ草木もどこか楽しげな印象に。
「自分ではなかなか手に取らない色味でしたが、空間のアクセントになってすごく素敵。中と外で、見る角度によって雰囲気も変わりますね。季節ごとに花を変えるように、布を掛け替えてみるのも楽しそうです。」
1枚の布をさまざまな用途に使う〈14-23〉。暮らしにベストなサイズを提案することで、日常に取り入れやすい価格帯を実現しています。PAUSEの花にも同じように、日々の暮らしに取り入れてもらうための工夫がありました。
「お花もあまりに高額なものだと、日常的に取り入れるのは難しいですよね。たとえば週に一度、買って帰っても、負担にならない価格帯を意識しています。でも、珍しいお花を仕入れようとすると、どうしても割高になってしまう。だったら必要なものは、自分で育ててしまおうと思ったんです。」
なかなか手に入らない花は、山梨県の八ヶ岳の麓に借りた畑で自家栽培しているという吉原さん。自ら土壌改良し、千葉のアトリエと行き来しながら、現在12種類の花を育てています。
「いまは月に1度、北杜市に通いながら、見られない間は友人にお世話を頼んでいます。ゆくゆくは移住して、畑の近くに拠点を作れたらと考えています。」
日々の疲れを癒す存在だからこそ、無理せず続けられるものを。食卓に、ベッドルームに、玄関に。ひとりひとりの生活にそっと寄り添います。
軽やかな時間を生み出す花と布。季節や気分にあわせて取り入れて、つい「ひと休み」したくなるような、自分だけの景色を見つけてみませんか。