自然体で過ごす、ちょうどいい住まいの在り方。
ある時は、光を取り込む窓辺に。
ある時は、食卓を華やかに彩るテーブルに。
ある時は、風合いの良さを肌で感じるベッドリネンに。
使う場所や⽤途によって、その布の表情はがらりと変わる。
さまざまな⼈びとの暮らしから、〈14-23〉がある⾵景をお届けします。
都内のマンションにて旦那さんと2人で暮らす、俳優のQ本かよさん。結婚後、3度目の住まいづくりのテーマは「正直であること」。背伸びせず、自然体でいられる暮らしを目指し、リノベーションした78平米の空間には、たっぷりの光が差し込み、部屋中を巡ります。暮らし始めて5年、はじめてのリノベーションを経験した夫婦の居場所は、どのように変化したのでしょうか。すっかり生活に馴染んだ〈14-23〉が作る、軽やかな景色と合わせてご覧ください。
旦那さんの仕事の独立を機に、大阪から東京へ、住まいを移したのは8年前のこと。当時、暮らしていた築浅の賃貸は、大きな不満はないものの、どことなく居心地の悪さを感じていたそう。原因のひとつは「日当たりの悪さ」。それに加え、ちょっとした生活導線の悪さも気になっていました。
「中古マンションを購入してリノベーションしたい。」
なんとなくやり過ごす日々に限界を感じ、かねてより夫婦の夢であったリノベ計画が動き出したのは、東京での生活が3年目を迎えた頃でした。
新築よりリノベーションを選んだのは、自由度の高さから。さらにいうと、つるんとした真新しい素材より、経年した質感が好きだったから。そこに対する夫婦の見解に相違はなく、プランニングから工事まで一貫して行うリノベ会社と契約を済ませると、とんとん拍子で家づくりは進んでいきます。
「要望を詰め込んだフルオーダーのリノベーションは、間取りや材質、床の段差の高さまで、プランナーさんと二人三脚で、納得のいくまで作り込んでいきました。」
契約から約7ヶ月。はじめてのリノベーションを終え、手に入れたのは、開放的な78平米の空間。もともと4LDKだった間取りの仕切りをなくし、壁も天井も真っ白に塗られたその部屋は、日当たりがよく、心地いい風が循環する、理想の住まいでした。
結婚してから、3度目の家づくり。Q本さんは、10年を超える主婦生活のなかで、「自分にとって暮らしに必要なもの」が、明確になっていったといいます。
「丁寧な暮らしには憧れるけど、面倒くさがりな自分に嘘はつけない。洗濯物は畳まず、掛けたまま収納したい。衣替えはしない。食器や調理機器は、すぐ手の届く場所に。暮らしの見栄えの良さを重視しながらも、快適に過ごせる仕掛けを、隅々に取り入れました。」
キッチンやクローゼットなど、収納は基本オープンに。棚の奥底にしまった道具が行方不明になることなく、必要な時に、必要なものの居場所が、すぐにわかります。
「シンプルな見た目とコスパの良さから、シンクは業務用のものを選びました。飲食店にあるような二層シンクにしたのは、食材を扱うシンクと、洗い物をするシンクを分けられる方が便利だったから。家庭用のキッチンでは見かけないシャワーヘッドが伸びる仕様も、掃除をする上で譲れないポイントでした。」
ほかにも譲れないポイントとして、Q本さんらしいこだわりのひとつが「リビングにある洗面台」です。
「もともと、朝の身支度など、タイミングが重なった時に慌てないように洗面台は2ボウル並べたいという要望がありました。ただ、リフォームされたばかりの洗面台がすでに設置されていたこともあり、リビングにもうひとつ洗面台を作ることに。結果的に、絵を描く際に筆を洗ったり、植物の水やりにホースをつなげたり、想像以上に役立っています。」
窓辺からクローゼットにかけて、統一感のある「白い布」でまとめた空間。引っ越し当初から変わらず、空間を支えるこのアイテムこそ、〈14-23〉暮らしの布です。
「〈14-23〉には、リノベーションを担当してくれた『nuリノベーション』からの紹介で出会いました。実際に店舗で色味や素材感を確かめ、どの布にするか何度も悩みました。最終的に、壁の色にあわせたシンプルな白で統一することに。空間を圧迫せず、すっきりとまとまった印象が気に入っています。」
特性を生かしたほどよい透け感の〈TOSS〉は、リネンの質感と耐久性のあるポリエステルをバランスよく混ぜることで、長く愛用できます。
窓辺にかければ、強い日差しは抑えつつ、明るさを取り込むので、室内で植物を育てる時にはぴったりの1枚。日中は布越しに外の風景を楽しめ、夜はシルエットが映る程度に視界を遮ってくれます。
クローゼットの目隠しとして活用する布は、生活感を隠しつつ、空間を明るく保ちます。衣服への埃除けにはもちろん、扉とちがって気軽に換気ができ、省スペースに収まるのもうれしいポイント。
「光をやわらかく取り込む軽やかさや、自然なシワの寄り方など、使い込むほど、質感のよさを改めて実感しています。大きな面積に使う布だからこそ、妥協せずに選んでよかったです。」
「ダイニングは、これまで暮らしたどの家にもなく、小さい頃から憧れの存在でした。」と、話すQ本さん。それゆえに、構成する家具選びはとくにこだわった部分でもありました。
空間の象徴ともいえる、厚みのある大きなテーブルは、アンティークショップ「ANTISTIC」でオーダーしたもの。天然木の風合いを生かした天板を、どっしりとした鉄製の脚が支えます。不揃いに並んだ椅子は、旦那さんがアンティークショップで買い集めたものだそう。
テーブルを照らす照明は、ヨーロッパの工場や病院で使われていた「チューブランプ」。「明るすぎない方がいい」と、2本の蛍光灯が主流のなか、さんざん探して1本仕様の蛍光灯を発見。夜もほどよく食卓を照らします。
モルタルを基調としたシンプルな生活空間を理想に、厳選したものと共にスタートした新生活。それから5年の月日が経ち、暮らしのスタイルは、大きな変化を遂げました。
「もともと物数が少なく、色も抑えめで、いわゆるミニマルなスタイルが好きでした。2~3年前から暮らしに植物を取り入れるようになり、色や装飾を楽しむデコラティブなスタイルに変わってきました。たぶん、今が一番ものに溢れた状態。ここからまた少しずつものを削ぎ落としていって、ちょうどいいバランスを探っていきたいです。」
シンプルなスタイルから脱し、現在、暮らしの変革期を迎えていると話すQ本さん。好きな家具や雑貨で遊び心を取り入れつつ、洗練されたスタイルを目指す「攻めの姿勢」で、空間づくりを楽しんでいます。
リビングの一角には、去年お別れをした愛犬を悼んで作ったスペースが。お気に入りのものを集め、共に過ごした日々をいつでも思い出せるように。
ワークスペースの天井に設置したポールに布をかけることで、来客時には、プライベート空間を仕切っています。お気に入りの布や、ブランケットなど、気分で付け替えるこのシーンに、新たな〈14-23〉を迎えてみました。
自分らしさを詰め込んだ空間には、アクセントカラーの布を提案します。すでに愛用する〈TOSS〉シリーズから迎える、色違いのレッドは、さらりと1枚かけるだけで、ご機嫌な空間を演出します。
「結んでかけるスタイルが新鮮で気に入りました。クリップを付けずに、気軽に付け替えられるのもうれしいです。」
しっかり視界を遮りたい時は、リサイクルリネンを使った厚手の〈Re.nen〉がちょうどいい。異なる素材感でも、同系色でまとめることで、統一感のある印象に。
昔から、服を作ったり、絵を描いたり、自分で手を動かしながら何かを作ることが好きだというQ本さん。この家に引っ越してからは、DIYの楽しさに目覚め、ちょうどいいアイテムに出会えない時は、ホームセンターに駆け込んで手作りするそう。
これまで手作りしたアイテムは、ワークスペースの作業台からはじまり、こたつ布団、ベランダの植物を置く台など幅広い。最近は、収納アイテムの製作に励んでいます。
「我が家の収納スペースは限られているので、いまの物量だと、ものが溢れてしまいがち。足りない収納は、DIYで作っています。端材や工具類をまとめるワゴンもそのひとつ。作業する時にさっと取り出せるよう、ワークスペースのテーブル下に収納しています。」
「物件を選ぶ時、決め手になったひとつが窓からの眺めでした。目の前にある公園に咲く桜の木がすごく綺麗で。引っ越してからは、毎朝、目が覚めるとまず窓を開けてその景色を楽しむくらい気に入っていました。」
しかし、お気に入りの桜の木があった公園は、ある日突然、駐車場へと姿を変えてしまいます。
「すごくショックでした。もともと周辺には自然を感じる場所が少なかったこともあって、好きな景色は自分で作るしかないと、植物と暮らすきっかけになりました。」
5年のうちに、住まいを取り巻く環境や、生活のスタイルは、少しずつ変化していきました。それでも家は、変わらずここに在って、うれしいことがあった日も、落ち込んだ日も、心の拠り所となる場所。
好きな絵を飾り、植物に水を与え、素材のいい布を窓辺に飾る。ユートピアのかけらを集めるように、暮らしを築いていきます。