いつでも側に手仕事を。 食べて、旅して、繕う暮らし。

ある時は、光を取り込む窓辺に。
ある時は、食卓を華やかに彩るテーブルに。
ある時は、風合いの良さを肌で感じるベッドリネンに。
使う場所や⽤途によって、その布の表情はがらりと変わる。
さまざまな⼈びとの暮らしから、〈14-23〉がある⾵景をお届けします。

ファッションの世界で長く働いたのち、現在はロングライフをテーマに衣食住を取り扱う〈D&DEPARTMENT〉にて、商品開発を担当する重松久惠さん。都心の暮らしを手放し、60代ではじめて購入した住まいは、幼い頃から親しんだ街・立川にある古い団地でした。
「布に囲まれた家」をテーマに、インテリアにお気に入りの布を取り入れた暮らしをスタートしました。古い布を集め、ときに繕いながら、自分らしく楽しむ日々。手仕事と共に豊かさを育む、健やかな団地暮らしをうかがいました。

今から3年前、66歳のタイミングで長らく過ごした都心を離れ、地元の立川に戻ってきたという久惠さん。
離婚を経て一人暮らしを続けてきたなかで、「この先ずっと家賃を払い続けるのも大変だし、そろそろ腰を落ち着けたい」という思いから、家探しがはじまりました。

当初は、布の産地で何度も訪れていた群馬や山梨の家を検討していましたが、なかなかいい出会いはありません。ふと、「団地っていう選択肢もありかも」と、幼少期から慣れ親しんだ街にある古い団地へ、軽い気持ちで見学にいったそう。

改修によってLDKが広く取られた団地の一室は、想像以上に使い勝手のいい間取りでした。ゆったりとした庭のある贅沢な土地の使い方は、昔の団地ならでは。静かで、風がよく通り、どこか懐かしさのある景色。長い年月をかけて育った大きな樹々は、3階の窓の高さまで枝を伸ばし、部屋の中にまで緑の影を届けていました。
窓の外にうつる風景に心をつかまれたように、内見したその日に迷いなく「ここで暮らそう」と決めました。
新たな住まいのテーマにしたのは「布に囲まれた家」。そのなかでも生活の主役に置いたのが、壁一面に設けた棚と布です。

〈D&DEPARTMENT〉で商品開発を担当している久惠さんは、自社商品のスチールシェルフを活用し、天井に取り付けたレールから布をふわりと垂らして、「見せる場所」と「隠す場所」を棲み分けています。

「当初はすべて布で隠す想定でしたが、圧迫感があったので、気になる部分だけ布で隠す今のバランスに落ち着きました。」
棚に並ぶのは、本や食器、日用品、お気に入りの雑貨など。最上段に並ぶかごには、趣味の手仕事で使う生地や糸などの材料が収まっています。

「ものの番地をつくると、戻すだけなので片付けも楽なんですよ。本もこの棚に入る分だけ。ときには手放しながら、必要以上のものを持たないようにしています。」
使う頻度に合わせて「ものの居場所」を決めていくことで、暮らしが自然と整っていくのだそうです。ものが循環する整理術も、収納スペースが限られる団地の暮らしを快適に過ごす工夫のひとつです。

棚にたっぷり収納された器の量からも想像できるように、お料理が趣味だという久惠さん。自宅では、月に2回は友人を招いて食事会をされているそう。
国内外の旅先で出会った料理を再現したり、季節の食材で食卓を彩ったりと、集まる人との会話と一緒に、食卓にはいつも温かく豊かな時間が流れます。

ダイニングテーブルは〈D&DEPARTMENT〉の天板に、友人から譲り受けた脚を組み合わせてつくったもの。8人くらいで食卓を囲むのにちょうどいい大きさです。

布との暮らしは、今になってはじまったものではなく、実はいろんな形でいつも側にありました。

若い頃から旅が好きだという久惠さんは、これまで25回以上訪れているというインドや、3年間暮らしたイタリアなど、各地から衣食住のインスピレーションを自分の暮らしに生かしてきました。モロッコやインドから買い付けたラグを敷き詰めて暮らしていたこともあるそう。
「これまでずっと賃貸だったから、壁や間取りは変えられないけど、布は暮らしのアクセントとして、時々入れ替えながら楽しんでいました。」

コンサル業や大学講師の仕事を並行しながら、久惠さんが〈D&DEPARTMENT〉の仕事をするようになったのは、11年前。知り合いの縁から、布の商品開発を任されるようになったそう。
「〈D&DEPARTMENT〉で扱うインテリアは、金属や木材のアイテムが多いから、もっと布の余地を広げたいと思って。入ってすぐのタイミングで、〈14-23〉を取り扱うようになったんです。」

「カーテンっていう言葉が、窓辺にしか使えない縛りをつくってしまっていて苦手だったんです。遮光性や断熱性など、必要以上に機能性を求めすぎて、インテリアとして扱いづらい印象がありました。そんな時に〈14-23〉がテーマとする“一枚の布でいい”という言葉がすごく腑に落ちたんです。」

窓辺や棚の目隠しに使う白い布。フランスのヴィンテージのものや、兵庫県の幡屋さんで織られたものなど、前の住まいから引き継いで使うお気に入りの布は、足りない部分を継ぎ足しながら大切に愛用している久惠さん。

今回は、「色を取り入れたらどんな空間になるか、みてみたい」という希望から、普段は白で統一する空間へ、色とりどりの〈14-23〉でスタイリングさせていただきました。いつもとはちがう、新鮮な風を暮らしに運びます。

まずはダイニングの窓辺に取り入れたのは、ナチュラルで穏やかに光を取り込む〈SEIRO〉。庭の樹々の緑が、布越しに爽やかに映ります。

蒸篭からインスピレーションを受けて生まれた〈SEIRO〉は、マットな糸と光沢感のある糸を混ぜることで、木の質感を表現。和風や洋風、どんなテイストでもすっと馴染みます。
「すごく綺麗!光にあわせて表情が浮かび上がるのがいいですね。惚れ惚れするなあ。」

〈SEIRO〉だけでなく、さらに2色の〈TOSS〉を組み合わせて、空間のアクセントに。軽やかでありながら深みを兼ね備えたネイビーは、派手になりすぎず安心感のある空間を演出します。


ハードルが高く感じるカラーの布ですが、ネイビーは白や木の素材感とも相性がよく、お気に入りの家具を引き立てます。透け感のある素材は、棚の前に取り入れても圧迫感なく空間に寄り添います。

一枚で2種の柄を採用しているのは、〈ieno textile〉で不定期に生産している〈RemakeTex〉シリーズです。〈14-23〉の製造工程でどうしても余ってしまう、「切れ端」をつなげたパッチワークのデザインです。

布を最後まで活用したい思いで制作した〈RemakeTex〉。今回は、幅を通常の〈14-23〉の約半分のサイズで70cmに仕上げました。

ふだんのスタイリングに追加したり、限られたスペースの間仕切りや収納の目隠しに、気軽に取り入れることができます。

デスクの窓辺には、きらめく質感が美しい〈THIME〉と〈TOSS〉のホワイトを。あえて異なるカラーを選ぶことで、シンプルながらも空間にメリハリが生まれます。

光をほどよく取り込む、透け感のある生地は、明るく軽やかに暮らしに寄り添います。視界に布を持ち込むことで、集中できる空間づくりに役立ちます。

すっきりと整えられたキッチンには、鮮やかな〈TOSS〉のイエローをお迎えしました。

気持ちを明るくするイエローは、枝いっぱいに黄色い小さな花を咲かせるミモザが、 満開した時の明るい色をインスピレーションにして生まれた一枚です。
「ふだんは選ばない色味なので、すごく新鮮!部屋が一気に明るくなりますね。窓辺の選択肢はもっと自由でいいんだ、と改めて実感します。」

ieno textileオリジナルの〈カーテンクリップ〉は、好きなモチーフを組み合わせて使うのもおすすめ。何気ない日常に遊び心をプラスします。


寝室の窓辺は、ダイニングと同じ〈TOSS〉のネイビーと〈SEIRO〉の〈RemakeTex〉でコーディネート。ベッドカバーともリンクして、まとまりのあるリラックス空間を演出します。

布に囲まれた生活を送るなか、自身でも織物や刺し子などを通して、日常に寄り添うアイテムを手がけることが増えたといいます。

「コロナをきっかけにすっかり手仕事にハマっちゃって。一からつくるというより、布や器を繕ったり、使い古したものをリメイクすることが多いです。」

ほかにも傷んだ服を補修したり、ブラウスやバッグを染め直して使うことも。生地の染め直しや、あまった生地(残反)をつかって新たなものづくりに生かす活動は〈D&DEPARTMENT〉でプロジェクトのひとつとしても展開しているのだとか。

さらに、5年前からは月2回、近所の金継ぎ教室に通っているそう。「直す器がもうないから、今は友人から頼まれた器を金継ぎしてるの」と笑って話します。
生活のなかに入り込むものを、自分の手で繕っていく。手をかけて育てたものは、新品の時より不思議と愛着が湧きます。

「春から一年間、青森へ行くの。裂き織りを習いに」
裂き織りとは、不要になった布を裂いて織り直し、新しいものに生まれ変わらせる織りの技法のこと。食卓を引き立てるランチョンマットも、実は久惠さんが裂き織りでつくったもの。

裂織の本場の青森で、いらなくなった布を生かして、ものづくりをする。そんな循環のなかで生まれる手仕事を、会社のプロジェクトではなく、個人として生業にしていきたいという思いから、「70歳になったら留学しよう」と決めていたのだといいます。
「六畳二間ほどの小さなアパートを借りる予定なんです。手づくりの布で、この家以上に布に囲まれた暮らしがしたい。ああ、どんなインテリアにしようかな。今からもうワクワクしてます。」

年を重ねるごとに、新たな喜びをつくる久惠さんの姿は、眩しいくらい美しい。食べて、旅して、繕いながら、まだ見ぬ未来もきっと、軽やかなリズムで暮らしを刻んで。

14-23 Half・RemakeTex
縫製現場でどうしても最後に余ってしまう、 きれはしをつなげて別のデザインに生まれ変わった布。
※数量限定品
9,800円(税込10,780円) 〜
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