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外と内、あいまいな境界を行き来する家で

ある時は、光を取り込む窓辺に。
ある時は、食卓を華やかに彩るテーブルに。
ある時は、風合いの良さを肌で感じるベッドリネンに。

使う場所や⽤途によって、その布の表情はがらりと変わる。
さまざまな⼈びとの暮らしから、〈14-23〉がある⾵景をお届けします。

 

外と内、あいまいな境界を行き来する家で

海のそばにある小さな町、神奈川県・二宮。自然に囲まれたこの場所で家族と暮らしながら、雑貨店「日用美」を営む浅川あやさんの家を訪ねました。森のなかにいるような開放的な空間で、おだやかな冬の光にゆらめく〈14-23〉は、さまざまな表情を見せてくれました。

海のそばでの暮らしは2度目。浅川さんは、鎌倉での10年の生活を経て、二宮へ住まいを移しました。自ら図面を描いて設計したお気に入りの家を手放してまで、この場所を選んだ理由は、何だったのでしょうか。

「結婚当時は、まだ東京に暮らして、夜遅くまで仕事をして、家には寝に帰るだけ。そんな暮らしが嫌になって、海の近くに家を建てることにしたんです。わたしも主人も、もともと設計会社で働いていたこともあって、図面は自分たちで。1階はお店にして、2階と3階で暮らすコンパクトな家です。生活に不便もなく、一生そこに住むつもりでした。ただ、海まで徒歩5分とはいえ、場所は住宅地。もっと自然に近く、緑に囲まれた生活に憧れるようになっていきました。」

 

空想のなかで描いた“大きな小屋”

便利でコンパクトな住まいから一転、思い描いたのは“大きな小屋”のような家。空想で描いた図面を実現できる場所を探すうち、出会ったのがこの土地です。駅から徒歩5分の立地ながら、森のような庭がついた380坪の物件。小高い丘を登り切った先には、樹々に囲まれるように、廃墟同様の古い家がありました。再生して使えれば、きっと理想を叶えられる、と浅川さんは思いました。

「リノベーションに詳しい友人に相談したんです。これ、買っていいと思う?って。そうしたら、俺だったら買わない、と言われました。でも、どうしても諦められなくて、一か八か購入を決意しました。」

何度も思い描いた図面の通り、見事に再生された家は、内と外の境界が曖昧になるように、自然を望む大きな窓をとり、縁側には外でもゆったりと食事ができるダイニングスペースを設けました。天井まである引き戸を開ければ、まさに小屋のごとく、ひとつながりの空間へ早変わり。内装や家具に本物の木をふんだんに使った家は、時間が経つほど風合いを増し、家族の歴史とともに味わい深く育っていきます。

 

住まいを引き継ぎ、新たな街へ

「ここが建つ少し前、鎌倉の家に古い知人が訪ねてきたんです。雑談しながら冗談半分で、“もしここを売るようなことがあったら教えてね”と言われて。家を売りに出した直後の出来事だったので、そのままとんとん拍子に譲り先が決まり、無事に二宮へ引っ越してきました。今でも以前の家へ気軽に遊びに行けるので、すごくうれしい偶然でしたね。」

新しい家に越すタイミングで、浅川さんのご両親も実家のあった福岡より迎えることになり、5人での賑やかな暮らしがスタートしました。

 

自然を暮らしに持ち込む

内装や家具だけでなく、部屋を構成する小物にも木製のものが目立ちます。実は、食卓に並ぶ器やカトラリーは、家を建てる時に伐採した木が使われているそう。

「伐採した時に、知り合いの木工作家さんに取りにきてもらって、生の木を使っていろんな小物を作ってもらいました。お店でも販売して、ほとんど完売。生の木から作るので、照明なんかは時間が経つと、自然な歪みができてそれがまた美しいんです。」

新しい生活を切り開くために手をいれた木は、無駄にすることなく、形を変えて生活の一部に。さらに庭の竹藪から切り出した竹は、物干し竿や寝室の窓辺で活用しています。

そんな自然の素材にくるりとかけて垂らすのは、どんな家具とも相性のいいグレーの「TOSS」。軽くてしなやかな薄手の布は、朝日をほどよく遮るのにちょうどいい。端をクリップで止めれば、動きが生まれ、窓辺のちょっとしたアクセントになります。

 

シーンに合わせて印象を変える素材

ベッドまわりに使う「Re.nen」は、余った糸で作るリサイクルの布。リネン100%ながら、何度も使い込んだようなやわらかさが特徴です。いつものベッドリネンに1枚プラスするだけ、雰囲気の変化が楽しめます。

寝室だけでなく、テーブルクロスや間仕切りとして、さまざまな暮らしのシーンに取り入れることで、その使い勝手のよさに気づいたと話す浅川さん。「無駄がなく循環して使える、リサイクルの素材でありながら、丈夫な仕上がりに驚きました。折り返しがないので、垂れた布のシルエットもすっきりとしていて美しいです。」

 

自然と人が集まる家

小学5年生の息子を持つ母でもある浅川さん。広い庭やリビングのある家は、子供たちにとっても居心地のいい場所。学校帰りの子供たちが多い時には10人ほど集まることもあるそう。

「外で鬼ごっこをしたり、薪割りをしたり。そうかと思えば、リビングで静かに宿題をしていることも。子供たちが使うのはいつも玄関ではなく、勝手口。庭からそのまま家の中まで入ってきて、遊んでいます。」

勝手口からお風呂場まで、一直線で向かえる動線。掃除や手入れが簡単な土間の床。外から帰った子供たちが汚しても、ささっと箒で外へ掃きだすだけ。あまり神経質にならなくて済むような工夫も、家づくりのこだわりのひとつです。

 

揺れめく光を眺めながら

すぐそばで聞こえる鳥のさえずり、窓を開ければ、樹々の合間から爽やかな風が抜ける。家にいながら、まるで森林浴をしているような心地よさです。

「三方の窓からそそぐ木漏れ日は、ゆらゆらと揺らめいて、言葉にならないくらい綺麗。つい時間を忘れて眺めてしまいます。」

 

築80年の洋館から生活を彩る道具を届ける

浅川さんが営むお店「日用美」は、彼女が鎌倉に暮らしていた頃から、約10年続く、日用品のお店です。インテリアショップでの家具製作や、接客の経験から、自分の好きなものだけを紹介する場所ができたら、と住まいと地続きのスペースで、お店を構えました。

現在は、住居の隣にもともとあった古い洋館を改装し、レトロな味わいが残る、新たな空間でお店を営んでいます。棚に品よく並ぶのは、浅川さんが実際に使う、日常をやさしく彩る道具たち。二宮の地に住まいとお店を移してから、暮らしと仕事の境目がなくなっていくのを実感したと話します。

撮影も終盤、空の色がゆっくり変わっていきます。差し込む夕日に重なりあうように、窓に垂らすのは、台風の後の空の風景を写した「SORA」。部屋をあたたかな色で包みます。

 

次に暮らすならまた海のそばで

海まで歩いて10分。日常的に海がそばにある暮らしは、もう手放せないといいます。

「息子はサーフィンをするので、よく車で海まで送って行きます。わたしは海にこそ入らないけど、波の音を聞いていると穏やかな気持ちになります。もう少し歳を取ったら次はまた海まで歩いていける距離に、小さな戸建てを建てようかな。海に沈む夕日を、いつまでも眺めていたいです。」

 

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<「日用美」 企画展示のお知らせ>
2022年 3月 20日(日) 〜 22日(火)

期間限定で「日用美」にて、ieno textileのPOPUP SHOPを行います
ぜひ、ご無理のない範囲でお越しください。

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person / Aya Asakawa
 
edit & write / Arisa Kitamura

photo / Yuko Saito
外と内、あいまいな境界を行き来する家で

14-23 Ufufu

上下を変えることで、暮らしを快適にするテキスタイル。

12,800円(税込14,080円)

ONLINE SHOP
外と内、あいまいな境界を行き来する家で

14-23 TOSS (GR)

リネンとポリエステルの糸をバランスよく混ぜ合わせ、軽くて心地よい光を取り込むしなやかなテキスタイル。

9,800円(税込10,780円)

ONLINE SHOP
外と内、あいまいな境界を行き来する家で

14-23 Re.nen (YE)

リネンの生地の製造過程でどうしても出る布の端材部分や糸の残りを集め、リサイクル技術を活かし再活用した植物を原料にしない新しい発想の質感が良く丈夫なリネン100%のスペインならではの厚手の布です。

9,800円(税込10,780円)

ONLINE SHOP
外と内、あいまいな境界を行き来する家で

14-23 from earth - MIZU

時代に左右されないで欲しい美しく普遍的な光が反射するテキスタイル。水が美しく反射する瞬間をデザインです。

9,800円(税込10,780円)

ONLINE SHOP