山に暮らせば。四季が移ろう小さな平屋で、線を描く。

ある時は、光を取り込む窓辺に。
ある時は、食卓を華やかに彩るテーブルに。
ある時は、風合いの良さを肌で感じるベッドリネンに。
使う場所や⽤途によって、その布の表情はがらりと変わる。
さまざまな⼈びとの暮らしから、〈14-23〉がある⾵景をお届けします。

窓の外には、まっすぐに伸びる天然の山桜。春には花が満ち、夏は谷を抜ける風が家じゅうを通っていきます。日本文様の図案家・船山改さんが妻と愛犬と暮らすのは、軽井沢にもほど近い長野県・御代田町の山あいに、浮かぶように建つ小さな古い平屋です。
古いものを生かし、少しずつ手を入れながら、季節とともに変わっていく住まいを訪ねました。

人とのご縁から住まいが決まることが多いという船山さん。2年前から暮らすこの家も、偶然出会った物件でした。
「前の住まいを出ることが決まって、急遽引っ越し先を探すことになりました。いつも不動産屋さんに頼らず、自分で探しているので、その時も小諸市、佐久市、軽井沢周辺などを車で回り、最終的に行き着いたのが、この家です。」

「この辺で空き家ないですか?」と、道を歩く住民の女性に声をかけ、紹介してもらったのが現在の住まい。古いながらも、丁寧に住んできた跡が残る。船山さんはすぐに引っ越しを決めました。

当時の外壁は真っ赤。床を自分で張り替え、外壁はお気に入りのカラーである緑に塗り直してもらいました。現在も少しずつ改修を続け、これから本格的な冬がくるまえに、天井に断熱材をいれることも予定しています。壁を一部取り払い、愛犬のロビンが走り回れる空間をつくる構想も。

直しながら暮らす。手間もかかるし、不便も多いけれど、生活の変化にあわせて柔軟に形をかえる、唯一無二の心地よさが、確かに築かれていました。

住まいのテーマは「小さな山の暮らし」。船山さんが家を選ぶとき、ただひとつ譲れなかったのが、窓の外に広がる“景色”でした。

「疲れたときや、何かネガティブな感情に左右されることは、生きていれば当たり前にあると思うんです。そんなとき、外に出て人気のない自然を見ていると、そういう気持ちが薄まっていく気がして。僕にとって、自然を眺めることは大きなメディテーションなんです。」

山と谷にはさまれた地形のおかげで、この家にはいつも風が抜けていく。冬の寒さは厳しいものの、夏は湿気がこもらず、窓を開け放てば心地よい風が通ります。まわりを木々に囲まれているので、差し込む光もどこかやわらかです。

冷える日の膝掛けに、部屋の間仕切りに、何かを隠す目隠しに。船山さんの暮らしには、ふだんからたくさんの布が登場します。
そんな船山さんの家に、今回は、窓の外の景色や古い家具と相性のいい〈14-23〉をいくつか持ち込みました。

大きいソファでゆったりとくつろぐリビングには、 自然の美しい瞬間を映した、〈from earth〉シリーズから〈SORA〉を。

布に映し出されるのは、台風が去った後の夕焼けの空。窓の外に広がる山々に、いつか、どこかの空が重なり合います。差し込む光に反応して、淡いピンクやパープルにも見える。光によって異なる表情を持つ布が、窓辺を楽しく飾ります。

現在は、ブランドや店舗から依頼を受けるクライアントワークと、作家活動の2軸で活動する船山さん。描いた文様は、アート作品やロゴになることもあれば、のれんや家具など、暮らしに寄り添うプロダクトとして世に出ていくこともあります。

「もともと、日本の歴史や文化、ものづくりが好きだったんです。あるとき、定規とコンパスで幾何学模様みたいなものを描いてみたら、それが思いのほか面白くて。調べていくうちに、浮世絵や日本の模様も、最初の下書きは丸や三角といった図形でできていると知りました。この図形を日本らしく描いたら、文様になるんじゃないかと思ったんです。」

そうして図案を描き始めたのは、26歳のとき。リビングの壁に掛かるのは、そのころに描いた、いちばん大きな作品です。
マスキングテープの上にコンパスと定規で図面を引き、カッターで一つずつ切り抜いて色をのせていく。パソコンで清書することはあっても、描くのは必ずアナログです。「どう頑張っても、モニター上では同じことができない」と、船山さんはいいます。

今の仕事を始める前、船山さんはアパレルのパタンナーとして働いていた経験があります。服のかたちを決める型紙も、線を引くところから。それは、図案を描くことや、プロダクトのデザインを設計することにも、通ずる点が多いといいます。

「前の仕事も、線を描くことから、ものをつくってきました。今も昔も、やっていることは僕のなかでそんなに変わらないんです。」
船山さんのものづくりに影響を与えるのは、美しさだけではない、理由をもって生まれたデザイン。たとえば縄文土器の模様は、縄を右に撚るか、左に撚るか。その向きにも意味が込められていたという説があるのだそうです。

「人のDNAも、つぼみの形も、台風も。すべては渦でできている、という考え方があって。昔の人ほど、そういうことに気づいていたんだろうなと思うんです。」
何千年も前から引かれてきた線を、いまの暮らしに合う形で描きなおす。それが、船山さんの図案の仕事です。

家具や雑貨を選ぶとき、船山さんが心がけているのは「話せるもの」を選ぶこと。
「SNSで素敵な椅子や内装を見ると、なんだか知った気になっちゃうんですよね。でも実際には見てもいないし、座ってもいない。それよりも、自分の目で見て、ぬくもりを感じられるものがいい。これっていつ使われていたのかな、と想像できるような。結果的に、そういうものは自分も大事にできるので。」

ダイニングのテーブルは、27歳のころに船山さんがデザインした、オリジナルのプロダクトです。天板と脚は、釘を使わず、宮大工の伝統的な技術である「くさび」で留めているだけ。だから、天板と脚を簡単に取り外すことができます。脚の長さを変えれば、暮らし方に合わせて高さを調整でき、住まいが変わっても、同じ天板をずっと使い続けられるつくりです。
そのテーブルに合わせているのは、もとはホテルで使われていたという古い椅子。約2,000円で見つけた、思いがけない掘り出し物です。

そして、ダイニングの一角には、昭和につくられた飾り棚。どこか神棚のような佇まいで、船山さんはその前で手を合わせることもあるといいます。「いつか、こういうものを自分でもつくってみたい」と話すほど、お気に入りのひとつです。

今回ダイニングに迎えた〈14-23〉は、〈TOSS〉のピーチ。横向きにかければ、出窓や腰高窓にも心地よくフィットします。

透明感のあるピーチは、軽やかながら温かみを感じるカラー。食卓をゆったりと過ごせる心安らぐ空間へ。

布を留めるのは、魚や貝殻などのモチーフを使ったレトロな風合いのクリップ。組み合わせて使えば、遊び心のある窓辺に。

先住民族の弓や、山で拾った鹿の角など、棚や壁のあちこちに、それぞれの物語を持つものが並びます。

古い桐箪笥も、自分で直して文様を描き、いまの暮らしの道具として生まれ変わらせました。
「文様も、家具も、宮大工の技術も、大きい枠組みでは同じ“プロダクト”。そこを変に線引きしないで、日本の面白い技術を、それぞれのものづくりに生かせたらいいなと思っていて。古いものや伝統的な技術を、自分なりのデザインに解釈して、現代の生活にとりいれられるプロダクトにする。それを仕事にできることが、幸せだなと日々感じています。」

この家では、収納や部屋の扉を取り払い、かわりに布で仕切っています。ふだん仕切りに使っているのは、韓国の伝統的な布・ポジャギ。布越しに、やわらかな光が透けて見えます。

今回は、いつものポジャギに代わって、〈14-23〉を仕切りに迎えます。

〈TOSS〉の軽やかでほどよい透け感は、扉の代わりに使うことで、ゆるやかに視線を遮りながらも、圧迫感なく、空間を仕切ります。

明るいカラーがアクセントに。ミモザが満開した時の色を採ったイエローは、玄関や入り口にかけると、出入りの際に気持ちを明るくしてくれます。

寝室の入り口には、ふっくらとした豊かな質感の〈LA〉を2色組み合わせました。 しっかり視線を遮る厚手で、安心感があり心落ち着く空間に。空間を仕切りながらも、空間同士をやさしく繋げるのも布ならでは。

穏やかなオフホワイトは、厚手ながらも窓からの光を感じられるので、閉め切っていても明るい空間を保ちます。

立体感のある豊かな質感が、やさしく包み込まれるようなくつろぎの時間を生み出します。

クラシックなアクセントカラーのジンジャーレッドは、ヴィンテージの家具や古材、深い色みの木材とも相性抜群。

カーテンレールのない場所には、つっぱり棒やポールを渡して、布をかけるだけで、手軽に布の扉を暮らしに取り入れることができます。

「古いものや、物語があるものと、自分でつくったものが一緒になっている空間って、居心地がいいんですよね。きれいで新しくて、便利でスマートな家もいいと思うんです。でも僕は、家を自分で直したり、古いものをあえて探しに行ったりする、その余計な時間を楽しみたい。そこに、まだ知らない価値観がある気がしているんです。」

そんな暮らしにも、いま、大きな変化が訪れています。ひとりで住みはじめたこの家に、奥さんが加わり、これから新しい家族も迎えます。

「この家のリフォームが終わったら、次に暮らす家も自分の手で直していきたいですね。家具のデザインにも、もっと挑戦したい。できるなら、家ごとつくってみたいんです。自分で手がけた家に、描いた絵や撮った写真、つくった家具が一緒にある。それが、いまの僕が考えられる究極の理想なんです。そこまでできたら、すごく人生が豊かだろうなと思うんです。」

春の山桜、夏の風、秋の色づき、冬の澄んだ空。四季が移ろうように、この小さな平屋も、家族の線を描きながら少しずつ姿を変えていきます。
14-23 from earth - SORA
言葉では言い表せない最高の景色。偉大な自然からインスピレーションを得た『from earth』シリーズ。長い時間をかけて、自然が作り出した奇跡をデザインしました。
10,800円(税込11,880円)
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14-23 LA (GRE/OWT)
再生したシェニール糸を高密度に織り上げた、ふっくらと肌触りの良い厚手。立体感のある表情が、空間をやわらかく上質に整える布。
9,800円(税込10,780円)
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